金沢の夜の活気回復へ食品業界も知恵絞る

閑散とした10月下旬の金沢駅前

金沢の夜の活気回復へ食品業界も知恵絞る

北陸最大の繁華街「片町」「香林坊」を擁する金沢市では、石川県が飲食店に対する営業時間短縮と酒類提供自粛の要請を解除した10月1日以降、客足の回復が鈍く、食品業界の関係者が頭を悩ませている。同県のズワイガニ漁解禁後、11月7日の近江町市場は今年一番のにぎわいを見せたが、まだまだ予断を許さない状況だ。それでも、地場卸や食品メーカーが知恵を絞り、年末の書き入れ時に向けて金沢の街に活気を取り戻そうとしている。10月下旬、金沢駅前の居酒屋は夕方6時を回っても閑古鳥が鳴いていた。だが、「本日のおすすめ」の7品すべてすでに品切れ。注文した客が「昼になくなってしまったのか」と失笑すると、店員は「仕入れの関係ですみません」と本当に申し訳なさそうだった。同店によると、客の戻りはコロナ前のまだ半分だという。食品業界関係者も、客足が思うように伸びない現状を懸念している。金沢市に営業所を置く食用油メーカーの担当者は、「われわれのような会社員は、飲み会を控えるように会社から言われている。忘年会向けの需要が今から心配」と打ち明ける。同市に支店を置く醤油メーカーの担当者は「駅前に事務所があり、夜の人通りの少なさを感じる。飲食店の席数制限も痛い」と話している。この状況下で、業務用食品卸のマルシン(金沢市、丸岡信之社長)がこのほど商品提案会を約1年越しに開いた。新型コロナウイルス感染対策のための完全事前来場登録制を採用して、北陸地区の外食関係者ら430人を集めた。各社が新商品を中心に紹介する中、汎用(はんよう)調味料など食品ロスを防ぎ、コスト削減に役立つ商品の展示が目立った。Mizkan金沢営業所は、さまざまな料理の味のベースをボトル1本で作れる「ベース職人」を積極的にPRしていた。また今回、マルシンはリアル展示会の醍醐味である試食提案に大きな比重を置いた。そのため、通路幅を6m確保するなど新型コロナ対策に万全を期した。丸岡社長は「コロナ禍で金沢だけでなく、北陸の飲食業は大きな打撃を受けている。少しでも回復のお手伝いがしたい」とし、「全国的に見ても北陸の食のレベルは相当高い。自粛ムードが早く明けてほしい」と心底願っている。

日本食糧新聞社