「ヤマハ発動機」製パフォーマンスダンパーの効果は、昔のアメ車を現代欧州車にまで変身させたみたいな!【試乗編】

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■パフォーマンスダンパーは本当に効いた!

レクサスの「F SPORT」や「NISMOロードカー」などに装着され、走りに絶大な効果があるといわれているヤマハ発動機の「パフォーマンスダンパー」。

「それって本当に効くの?」という長年の疑問を解消すべく、開発製造元であるヤマハ発動機を訪ねました。

その理論や構造に迫った「前編」に続き、後編ではお待ちかねの実車試乗。「パフォーマンスダンパーは本当に効くの?」に迫ります。

何を隠そう、こうして原稿を書いている筆者もレクサスの「F SPORT」や日産の「NISMOロードカーシリーズ」など、パフォーマンスダンパー付きのクルマには何度も乗っていて、「さすがパフォーマンスダンパー付きは違うね」なんて物知り顔で語っていた一人です。

ですが恥ずかしながら、実際のところ「パフォーマンスダンパー単体の効果」に関しては試した経験なし。

今回は同じ車両(レクサスGS)でパフォーマンスダンパーのあり/なしを直接比較できる貴重なチャンスなのだから楽しみで仕方ありません。忖度なしでジャッジしちゃいますよ。

結論からいえば「効きすぎてびっくり」です。

原理からして「効くだろうな」と予想はしていたんですが、ここまで効くとは…。

まずは、ダンパー非装着状態のレクサスGSでドライブ。設計が古いこともあって「GSってこうだっけ?」と思うくらい車体は緩めで剛性感が弱く、ちょっと大げさに言うとひと昔前のアメ車みたいです(この個体の新車時の味を知る人によると「経年劣化でこうなったのではなく最初から」とのこと)。

そこに、パフォーマンスダンパーを取り付けてみたらどうなるか? もう目から鱗っていうくらい、印象が全く違う。段差を越えた時や路面の凹凸による車体の共振が減って、まるでボディの剛性が上がったかのようです。こんなに違うの?

よく「車体剛性の高いクルマは路面からの衝撃をすぐに吸収する」なんて言われるけれど、パフォーマンスダンパー装着後はまさにそれ。人が歩くスピードほどの極低速域でも、路面からの衝撃をしっかり吸収するのが印象的です。

「ヤマハ発動機」製パフォーマンスダンパーの効果は、昔のアメ車を現代欧州車にまで変身させたみたいな!【試乗編】

そこから先、市街地を走っていても路面の悪い場所でのクルマの揺れが少なくなってフラットライド感が増すから、ドライバーはもちろん快適性が高まることで同乗者にもメリットをもたらしてくれる。

ボディがぐらつきにくいのは、ヤマハ発動機の担当者によると「車体が共振しなくなったことで、足回りが本来の性能を発揮できるようになったから」とのこと。凄いです。

ドライバビリティの向上としては、ステアフィールの落ち着きとしっかり感が増したこと。そして、ステアリングの舵角がしっかりと決まって旋回中の修正舵が減ったのが印象的ですね。

いうなれば「アメ車から欧州車に変身した」っていう感じ。

軽薄だった乗り味に、厚みが増しました。効果って、思っていた以上にわかりやすいですよこれは。

続いて、テスト用の特別なパフォーマンスダンパーを組み込んだトヨタ「86」の先代モデルに試乗。

この車両に装着されたダンパーは、室内のコントローラーから減衰力を切り替えられるようになっています。今回の試乗では、減衰力を細かく切り替えるのではなく、「最弱」と「最強」の2パターンで切り替えながら乗り比べてみました。

まず確認できたのは、最強にするとグラグラとくる車体の振動が緩和されてボディ剛性がアップしたかのような印象になること。本当に不思議ですが、車体補強部品を取り付けたのか?っていうくらい、しっかり変化します。

減衰力を高めると、パフォーマンスダンパー装着後のGSと同じように、乗り心地が良くなるとともにステアリングの落ち着きが増し、舵角もピタッと決まるように。

いちどパフォーマンスタンパーが効いた乗り味を知ってしまうと、効果を弱めた時には「86ってこんなにボディが柔かったっけ?」と思ってしまうほどです。

ステアリングの反応がよくなったから走りもキビキビして、サスペンションチューンをしたのか?っていうくらい操縦性がいい方向に変化。褒めすぎると嘘っぽくなっちゃうのを覚悟で言いますが、パフォーマンスダンパーの効果は凄いです。

パフォーマンスダンパーの装着/非装着は、いうならば、「ちょっと濁りのあった水がスッキリ澄んだ水になった」という感じ。ステアフィールやハンドリング、そして乗り心地にあった淀みや雑味が消え、スッキリとした味わいに変化するのです。パフォーマンスタンパー装着後は、雑味のある水道水を、浄水器を通して飲んだ時の感じにも似ています。

それは、クルマのフィーリングがレベルアップしたという言い方もできるかもしれませんが、むしろ「設計上の本来の性能を取り戻した」と考えるほうがわかりやすいかもしれませんね。

たしかに、アフターパーツとして買うと工賃も含めて10万円近くするので手頃とはいえないかもしれません。でも、こうして乗り比べてみたらその効果はよくわかりました。一度知ると、もう元には戻れないですよ。

ちなみにパフォーマンスダンパーは現在、年間約30万本を出荷。出荷本数は2021年末で累計250万本に到達したそうです。

新車で装着されているクルマは、自分で購入して取り付ける手間が省けるのだからある意味ラッキーですね。

それにしても、ここまで違うとは。

(文:工藤 貴宏/写真:田村 弥)