最後に紹介するのは、長年ローランドの代理店を行なってきて、現在はATVの代理店となっている中国羅蘭数字音楽教育集団(China RDEC Digital Music Education Group)。同社はローランド製品の輸入販売をしつつ、中国国内で音楽教室を幅広く展開してきた会社。それと同時に電子ピアノやエレクトリックドラム、ギターアンプなどの中国メーカーとしても力を付けてきている会社。
中国羅蘭数字音楽教育集団の電子ピアノギターアンプ
同社社長の息子であり、日本育ちでつい最近まで日本の金融機関で働いていたという程崧明氏によると「当社では中国の各地で音楽教育を行なっていますが、やはり一番需要があるのはピアノ教室です。バイオリンやドラムといった教室も人気は高いのですが、中国琴の人気も高く、楽器の販売数でいうとピアノに次ぐ第2位。年間40万台ほどのマーケットとなっています」という。一概には比較できないがヤマハや河合楽器のアコースティックピアノの製造台数が年間1~2万台と言われているので、驚異的な数字を聞いてしまったような気もする。
左が程氏、右が項氏
そのRDECが、いま開発中で、このMusic Chinaでプロトタイプを披露したのがMIDI搭載の琴だ。ステージでは、この琴のデモ演奏が行なわれ、伴奏に乗って正しく弾かれたかがどうかがテレビゲーム風にスクリーンに表示されていたが、これがまさにMIDI信号を利用したシステムになっている。
MIDIを搭載した琴のプロトタイプMIDI搭載琴の演奏デモ
程氏は「この琴は、教育・練習向けに開発したもので、琴自体は中国でもっとも大きな琴メーカーとの共同開発であり、当社ではMIDI部分を担当しています。音楽大学などと提携しながら、どんな使い方が可能かを模索しているところで、今後は琴以外にも、さまざまな中国民族楽器のMIDI化を検討しています」と話す。
開発を担当したエンジニア、項羽氏によると「弦をはじいたり、押したり、ゆらしたりという演奏操作を検知して、MIDI信号に変換できるようにしています。システム的にはMIDIギターなどとも似ているのですが、大きく異なるのは弦を止めている端の部分にセンサーを入れて、弦を押す圧力や振動などを検知している点です。この押す力をセンシングする楽器は琴のほかにはほとんどないので、この点を重視して作っています。左側、右側にそれぞれ別のセンサーを搭載し、演奏表現を正しく捉えられるようにしています」とのこと。
もうシステム的にはほぼ完成しているが、実際にこれをいつ製品化するのか、どんな製品にするのかなどは現在検討中とのこと。ちなみに、搭載されるMIDIはあくまでもOUTのみで、INを装備する予定は現時点ではないとのこと。このようにして中国生まれの電子楽器というものもいろいろと登場してきそうだ。
以上、中国上海で行なわれた膨大な規模の楽器の展示会について、そのごく一部だけを2回にわたって紹介してみた。本当に断片を見ただけという感じではあったが、この活気ある中国の状況が少しは伝わったのではないだろうか。まだソフトウェアのマーケットに関しては発展途上という印象も持ったが、中国のソフトウェア音源メーカーなどもどんどん増えてきていることを考えると、ここ何年かで大きく変わってきそうな予感もする。今後毎年Music Chinaに行くかどうかはともかく、これからも中国の状況はウォッチしていきたいと思っている。