2021年12月17日、大林組とNTTドコモ(以下、ドコモ)、エヌ・ティ・ティ・コムウェア(以下、NTTコムウェア)は、屋内の建設現場でドローンを活用して効率的に工事の進捗管理をする実証実験に成功したことを発表した。
建設現場を巡回するドローン
建設業では工事における作業工程ごとの状況写真や経過写真など、記録や進捗確認のために多くの写真を撮影するが、建屋内では位置情報の判定が困難なため、多くの場合は「階」や「工区」などの位置情報を写真管理システムに手入力している。また、異なる日付の写真を比較するには、それぞれの日付のフォルダから同じ位置情報の写真を探す必要があるため、手間と時間がかかることが課題となっている。
今回3社が実施したドローンを活用した進捗管理では、数日間隔で複数回、ドローンが建設現場の写真撮影を自動で行った。撮影した各日の工事写真は3Dデータ上の任意の箇所をクリックするとその場所の工事写真を閲覧することが可能。これにより、同じ場所で撮影した写真の時系列での比較が容易となり、人手のかかる作業を自動化できるため現場の負担を軽減できるという。
実証実験では、Skydio社製の自律飛行型ドローン「Skydio 2」と、ドコモが技術検証用に開発したドローン飛行プログラム、NTTコムウェアのドローン点検ソフトウェア「KnowledgeMap 4D」を活用。2021年7月15日~8月3日に、東京都品川区にある建設現場の約500平方メートルの屋内空間で実験を実施した。
116カ所の位置を記憶したドローンが建設現場の写真を最大10日間の間隔で計3回撮影し、天候および時間帯が異なる環境において設定されたルートを正確に自動・自律飛行できることを確認した。
Skydio 2は機体の上下に搭載する計6個のカメラで取得した映像から、周囲の三次元環境と自己位置を推定することが可能で障害物回避性能を有している。小型で狭小部でも飛行可能なため、建設現場のような複雑な空間でも撮影しながら飛行することができる。さらに、ドコモがSkydio 2向けに開発した技術検証用飛行プログラムを用いることで、多地点を通過するルートの事前設定が可能となり、GPSなどの位置情報が取得しづらい環境でも複雑なルートを自動・自律飛行する。
ドローンの画像から生成し、3D空間に配置された飛行軌跡と撮影点(KnowledgeMap 4D)
KnowledgeMap 4Dは、ドローンの飛行軌跡や撮影点を3D空間上に配置できるため、撮影時のドローンの位置や高度などの正確な把握が可能。撮影した画像を3Dデータ化し、同ソフトウェアに取り込むことで、建設現場を再現した3D空間上に工事写真の撮影箇所を反映することができる。これにより、KnowledgeMap 4D上に表示された点群のうち任意の点を選択すると、撮影場所単位で異なる日付の工事写真を表示し、時系列で容易に比較できることを確認した。
今後3社は、ドローンを活用した建設現場におけるさらなる作業の効率化に向けて引き続き連携するとしている。
工事写真の比較イメージ(左は7月15日、右は8月3日の同一建設現場の状況)