台風の目に入る瞬間映像
台風の目を囲む「壁雲」を突破する際の強い揺れに耐え、台風の目に入った瞬間、まるで「天空の城ラピュタ」を連想させる景色が広がった。と同時に、研究チームは直ちに観測ゾンデを投下、中心気圧等の調査に入った。専門家チームは将来、台風の勢力を落とす「台風制御」も視野に入れている。【取材】社会部気象・災害担当 牧尾太知映像取材部 鈴木常忍カメラマン
強い揺れのなか台風の目に突入
日本テレビは2021年9月29日、民放で初めて「台風の航空機直接観測」に同行取材した。名古屋大学の坪木和久教授が率いる研究チームが目指したのは、当時、沖縄の南の海上を非常に強い勢力で北上していた台風16号の「目」だ。万一、伊豆半島・関東方面に向かって来た場合には、19年東日本台風に匹敵する甚大な被害が予想されると、気象庁内も戦々恐々としていた台風だった。台風の上層は比較的風が弱く、安全なフライトであると頭の中で分かってはいたが、揺れで酔うのではないかという懸念と緊張から、カメラマン共々、朝食はあまり喉を通らなかった。フライト前のミーティング。パイロットは搭乗するメンバーに呼びかけた。「4万5000フィートという通常の飛行機よりもかなり高い高度を飛ぶ」「もしもマスクが下りてきたらすぐに着用を」「4万5000フィートでは10秒程度しか意識がもたない」。いざという時の備えを入念に確認し、私たちは高い緊張感を持ち台風16号に向かった。名古屋飛行場を離陸してからわずか30分後、早くも「台風16号」が見えてきた。
離陸から30分、コックピット から台風の巻雲が見える
名古屋大学・坪木和久教授「青空の境目と雲の境目、これが台風の最も外側の巻雲」飛行機はさらに進み、離陸からおよそ2時間、南大東島の上空を通過して台風本体の雨雲に入ったあたりから外は真っ白で何も見えなくなった。揺れも徐々に大きくなっていく。そしていよいよ、台風の中心、目の中への進入を開始した。そこに立ちはだかるのは、台風の目を囲む「壁雲(アイウォール)」。「壁雲」は非常に発達していて、地上では甚大な暴風被害をもたらし、猛烈な雨を降らせることがある危険な雲域だ。「壁雲」を通過する最中、数分間にわたり機体は上下左右に大きく揺れた。
最終更新:日本テレビ系(NNN)