ヒトの脚のように立って移動可能な椅子型モビリティ開発のLIFEHUB、CACとインキュベイトFから1億円をシード調達

次世代型モビリティ「TRANSELLA(仮称)」を開発する LIFEHUB は1日、サイバーエージェント・キャピタルとインキュベイトファンドからシードラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。同社は以前、プレシードラウンドでインキュベイトファンドから3,000万円を調達しており、それに続くものとなる。

LIFEHUB は2021年1月、中野裕士氏(CEO)らにより創業。中野氏は幼少の頃からロボットを作ることに憧れ、大学ではロボティクスやドローンを研究、その後、就職した世界最大手 CAE ベンダーでモビリティの開発や研究に従事した人物だ。共に仕事する CTO の野宮和洋氏は生体機械や人工筋肉などの設計や開発、CSO の荒川康弘氏は制御システムや自動運転を得意とするなど、経営陣3人は先進技術のエンジニアで固められている。

LIFEHUB は、Human Augmentation (人間拡張)を標榜するスタートアップと言っていいだろう。同社の開発する TRANSELLA は人間の脚に車輪を付けたような構造をしており、従来の車椅子と異なり、しゃがむ、立ち上がる、段差を乗り越える、エスカレータに乗ることが可能。小型化技術に得意な日本製部品を中心に構成されている。空間的な移動により、従来の車椅子にあった移動経路の不自由さや補助の必要性といった課題を解決する。

LIFEHUB の最初の資金調達(プレシードラウンド)を引き受けたインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏は、LIFEHUB との出会いを次のように語った。

 ヒトの脚のように立って移動可能な椅子型モビリティ開発のLIFEHUB、CACとインキュベイトFから1億円をシード調達

今回のシードラウンドに参加した、サイバーエージェント・キャピタル代表取締役社長の近藤裕文氏は、昨年10月に開催された「Incubate Camp 14th」で LIFEHUB と対面することとなった。このとき、近藤氏は LIFEHUB のメンターを務め、起業家がメンターであるキャピタリストを評価する「キャピタリスト賞」第3位の評価を受けた。

人の動きを介助したり、補助したりするロボティクスは、LIFEHUB が初めてではないが、装着が面倒だったり、使い勝手が面倒だったりすると、日常的には使えないものも多い。TRANSELLA は椅子型のモビリティであるため座るだけで使えユーザを選ばない。階段、急勾配、悪路などでも利用できることから、世界中にニーズはあるだろう。同社では調達した資金を使って、今春を目処に原寸大1分の1モデルを開発する計画だ。ただ、ここにも世界的な半導体不足が影を落としており、スケジュールは後ろにズレる可能性がある。

事業の観点からも狙いが定まりつつある。LIFEHUB では、まずは高齢者・障碍者向けに高機能車椅子として展開。将来は、階段の昇降や自動運転、B2B でのシェアリングモビリティサービス、そして、海外展開を目指す。今のところ、購入では1台150万円、サブスクでは介護保険適用で実質月額1万円で提供を予定しているが、なにぶん、原寸大プロトタイプをこれから開発するので、価格は大きく変動するかもしれない。

車椅子、モビリティ、移動のためのロボットを開発してきたスタートアップはこれまでにもいたが、クルマとしても、そして、ヒトのように立って歩けるという点で、従来とは明らかに違ったアプローチだ。赤浦氏と近藤氏は、その技術や事業の可能性を踏まえ、中野氏のことを「日本から生まれる、イーロンマスクになるかもしれない」と称賛した。