日本も関係するグアム防衛の最新事情 米軍の備えに新たな展開 見据える先は当然中国

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インド太平洋軍が必要性を叫ぶグアムの防衛

グアムのアプラ港に停泊する米原潜と海自潜水艦「はくりゅう」(写真左上)。潜水艦だけで7隻が停泊中。右下は米潜水艦母艦「フランクケーブル」(画像:アメリカ海軍)。

 近年、日本を含めたインド太平洋地域を担当するアメリカのインド太平洋軍がその必要性を一層強く訴えているのが、西太平洋に浮かぶグアム島の防衛です。たとえば2021年3月に開催された、アメリカのシンクタンクが主催するオンライン会議で、当時のインド太平洋軍司令官であったフィリップ・デイビッドソン海軍大将は「グアムにおける防空およびミサイル防衛に予算をつけることは私の最優先事項だ」とコメントしています。B-1とB-2の後継 試験生産中の戦略爆撃機B-21「レイダー」 また、デイビッドソン大将の後を継いだ現在のインド太平洋軍司令官であるジョン・アキリーノ海軍大将も、2021年11月に「私の望みは、近いうちに防御能力をグアムに配備することである」と述べています。

日本も関係するグアム防衛の最新事情 米軍の備えに新たな展開 見据える先は当然中国

アメリカにとってのグアムの重要性

 なぜインド太平洋軍がここまでグアムの防衛能力向上を標榜するのかというと、それには大きくふたつの理由があります。 ひとつは、グアムが有する軍事的な重要性です。グアムと聞くと、観光地というイメージが一般的かもしれませんが、実はアメリカ軍のインド太平洋地域における活動を支える重要な軍事拠点という側面もあわせ持っているのです。 たとえば、アメリカ空軍はインド太平洋地域へB-52HやB-1B、さらにB-2などの爆撃機を一定期間、展開させていますが、その展開先がグアムにあるアンダーセン空軍基地です。また、グアムのアプラ軍港には、原子力空母からイージス艦、原子力潜水艦に至るまで、アメリカ海軍のあらゆる艦艇が寄港することが可能で、弾薬や燃料などの補給を受けることができるのです。

日本も他人事ではない グアムを脅かす中国の軍事力増強

グアムのアンダーセン空軍基地に着陸するB-2爆撃機(画像:アメリカ空軍)。

 こうしたグアムの各種軍事施設は、平時はもちろん有事にも非常に重要な存在です。たとえば、北朝鮮や中国がアメリカと軍事衝突を起こした際に、まず攻撃対象になり得るのが日本にあるアメリカ軍基地です。そこで、滑走路や港湾施設にミサイルが命中したとなれば、一定期間その使用が不可能となります。 一方で、日本から2600kmほど離れたグアムであれば、中国や北朝鮮からも距離があるため、攻撃手段が限定されます。つまり、グアムにある各種施設が在日米軍基地の代わりを果たす形で、その後のアメリカ軍による反撃を支える重要拠点となり得るのです。つまり、グアムは日本の安全保障にとっても非常に重要な存在といえるわけです。 インド太平洋軍がグアムの防衛能力向上を目指すもうひとつの理由は、このグアムを攻撃する能力を、おもに中国が着々と向上させていることです。 これまでにも、中国は巡航ミサイルや弾道ミサイルなどグアムを攻撃可能な兵器を保有してきました。しかし現在では、その飛翔高度の低さや軌道変更などにより、既存の弾道ミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされる極超音速滑空兵器の開発を進めているほか、爆撃機や空母、駆逐艦などを太平洋方面へと進出させ、グアムをあらゆる方角から攻撃する能力を整備しつつあります。 先ほども触れたように、グアムは中国との軍事衝突を見据えた際の最重要軍事拠点のひとつであり、有事の際にはこうした兵器による攻撃にさらされる可能性が非常に高いのです。そこで、インド太平洋軍としては、こうした状況に対応するべく、グアムの防衛能力向上を主張しているわけです。

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最終更新:乗りものニュース