大手通信メーカーの日本無線株式会社(本社:東京都中野区/代表取締役社長:小洗健)は2021年11月15日までに、相対速度時速200キロでの小型無人航空機の自律的な衝突回避に成功したことを発表した。発表によれば「世界初」のことだという。
今回の取り組みは、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の公募事情の一環として行われたもの。SUBARU、日本アビオニクス、ACSL、マゼランシステムズジャパンと共同で実施した。
ちなみに公募プロジェクト名は「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/無人航空機の運航管理システムおよび衝突回避技術の開発/単独長距離飛行を実現する運航管理機能の開発(離島対応)」だ。
以下のように、2020年8月に日本無線などが実施事業者と選ばれたことが公表されていた。
▼「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」に係る実施体制の決定について|NEDO https://www.nedo.go.jp/content/100921044.pdf
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■世界の初成功!その飛行試験内容は?
今回の衝突回避飛行試験は、2021年9月9〜10日に福島県南相馬市の広域飛行区域で行われ、10キロクラスの無人航空機と有人ヘリコプターを、相対速度時速200キロ(無人航空機時速キロ、有人ヘリコプター時速150キロ)でそれぞれの正面方向から接近させた。
その後、無人航空機に搭載したセンサーの探知データに基づき、衝突を回避する経路がリアルタイムで生成され、この回避経路に沿って無人航空機が自律的に回避飛行することを確認したという。無人航空機に小型化・低消費電力化されたセンサーが搭載された。
飛行試験では、無人航空機が回避飛行を行った後、元の飛行経路に復帰することも確認された。
■期待の一方で懸念される「空の事故」
ドローンを含む無人航空機は農業分野などですでに活用されており、その他、災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどでも活躍することが大いに期待されている。ヘリコプターなどの有人航空機と「ニアミス」するという事例が国内で度々報告されている。
これまで公表されている内容においては、例えば2016年には4件の小型無人機と航空機とのニアミス事案があり、その中にはドクターヘリと接近した事例も報告されている。
こうしたニアミス事例をなくすために、ドローンを含む無人航空機の「衝突回避技術」は欠かせないものとなっている。
■政府も推し進める「空の産業革命」
政府は「空の産業革命に向けたロードマップ」を作成しており、有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現を2023年度には実現することを目指している。そのための環境整備や技術開発の計画も立てられ、すでに実行に移されつつある。
▼空の産業革命に向けたロードマップ2021|首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/pdf/siryou21.pdf
民間の企業も力を入れ始めている。例えばKDDIは2021年3月、ドローン同士の衝突回避などの管制を行うためのシステム「KDDIスマートドローン」を発表した。無人機や有人機の飛行情報を収集し、空の事故の発生を未然に防ぐシステムだ。
そして今回の小型無人航空機の自立的な衝突回避という世界初の成功も、政府が「空の産業革命」と位置付けるドローンなどの小型航空無人機の社会実装を大きく後押しそうだ。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?いつから乗れる?必要な技術は?」も参照。