理化学研究所(理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した新たなウイルス飛沫感染のシミュレーション結果を発表した。
室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測について明らかにしたもので、今回は、感染力が高いとされる変異株を含めた「15分会話における感染リスク」、距離を取ったり、パーティション使用したりといったシーンを想定した「飲食店における感染」、焼き肉店などの卓上排煙ダクトが設置された場合の「テーブルでの感染リスク」を予測。その対策についても示した。
理化学研究所 計算科学研究センター 複雑現象統一的解法研究チームの坪倉誠チームリーダー(神戸大学システム情報学研究科教授)は、「2mの距離で対面した際にも、時間が経過すれば感染リスクが高まる。マスクをせずに通常会話をしている場合、従来株では10%の感染確率に到達するまでに45分間だったものが、インド株(デルタ株)では20分弱で到達する」としたほか、「焼き肉店での排煙ダクトは感染リスク低減に効果がある」などとした。
理化学研究所 計算科学研究センター 複雑現象統一的解法研究チームの坪倉誠チームリーダー(神戸大学システム情報学研究科教授)
富岳は、2020年4月から、整備を進める一方で、文部科学省と連携して、新型コロナウイルス対策に貢献する研究開発に対して、一部の計算資源を供出し、世界最高性能を生かして、シミュレーションや予測などを行なってきた。2021年3月9日からは、学術および産業分野における共用を開始している。
今回発表したのは、内閣官房の「スマートライフ実現のためのAI 等を活用したシミュレーション調査研究」、文部科学省および理研「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ富岳の優先的な試行的利用について」などの支援を受けて実施してきた研究成果となる。
理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長
理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「富岳は共用開始以降、Society5.0に関わる様々なプロジェクトなどを進めており、とても忙しく利用されている。だが、共用開始前から行なわれている新型コロナウイルス対策に関わる研究は、継続的に行ない、その成果を出しており、感染防止にもつながっている。変異種によって、感染が広がる懸念もあり、新型コロナウイルス対策は、富岳の大きなミッションである。研究開発を強化して、成果を国民のみなさんにそれを提示したい。ワクチンが広がっても、油断してはならない。飲食店でも、しっかりとした感染対策を取る必要がある。今回は、6月22日に、西村康稔経済再生担当大臣が発表したデータの詳細を示す内容になる」などとした。