フーコット1号店がオープン、ヤオコーが子会社を通じて手掛けるディスカウントの姿とは? | リテールガイド

城取フードサービス研究所 城取博幸

ヤオコーが今年2月1日に子会社として設立したディスカウント事業の「フーコット」がついにその店舗をオープンした。8月3日、1号店として埼玉県飯能市に飯能店をオープン。ネイバーフッドショッピングセンターの核店のスーパーマーケット(SM)跡地に居抜き出店し、核店としての機能を果たす。

ヤオコーは2017年に神奈川県を地盤とし、食品ディスカウントストアを展開するエイヴイを子会社化、それぞれが事業展開しつつ、ヤオコーへの一部ディスカウントのノウハウの取り込みを図ってきたが、今年2月、子会社としてフーコットを設立。埼玉県など自社ドミナントエリアにディスカウント事業を別会社で展開する方針を打ち出した。

エイヴイは物流を含め、地盤である横須賀市のプロセスセンター(PC)を中心とした出店のため、出店エリアが限られる。ディスカウント事業の展開スピードを上げるために、新たに会社を設立しての展開となった。

そのため、フーコットのビジネスモデルはエイヴイのそれをコピーしたものとなる。「フーコットはエイヴイ型のディスカウント業態」(川野澄人社長)として、エイヴイと立地の被らない埼玉県を中心に展開を図っていく。

同社は今期2店の出店を計画するが、以前活用していた埼玉県小川町の小川デリカセンターを改修する形でプロセスセンター(PC)を稼働させることもあって、センターの効率的にも早い段階で5~10店程度の規模にしていきたいとしている。

目次

ヤオコーが、ライフスタイル商品を主力にした「食生活提案型スーパーマーケット」に加え、コモディティ商品を主力にする「ディスカウントストア」にも本格参入した。

付加価値を高めたミールソリューションを得意としていたが、フーコットはどちらかというと料理素材を強化した店のように見える。

それをエイヴイのノウハウを生かし具現化させた。「実験ではなく実行」に移された、ヤオコーの鮮度、品質のイメージを持つ、ディスカウントストアの誕生である。

オープン3日目、8月6日に訪店した(価格は、8月6日のもの)。

店の出入口は1カ所で、ワンウエーコントロールに近い形で誘導するのはエイビイ(エイヴイの店舗)と似ている。

コンコースを逆流するお客はあまり見られなかった。長方形のシンプルなレイアウトで通路幅も十分確保しているため買いやすい。

レイアウトは青果から始まり、鮮魚、塩干、精肉、惣菜、日配、酒へと続くSMの標準的なレイアウトだ。大型店であるため、酒売場、ドライ食品、菓子、雑貨の売場スペースは十分確保できている。特に酒売場はSMとしては最大級の売場といえる。ドライ食品の売場もゴンドラごとにめりはりを付けおもしろい売場を構築した。

野菜、果物、鮮魚、塩干、精肉は基本的に全て自社PCからのアウトパック商品で品揃えしている。果物売場にカットスイカがあるが、アウトパックのようだ。

鮮魚売場の真サバの丸魚売場には「センターで加工しているため、調理加工はが受けられない」旨の掲示がある。バックヤードを持たないことをお客に告知している。

そのため、刺身の盛り合わせなどの商品の品揃えはない。その代わりセンター加工のマグロのサク切りやカツオのサク切り、サーモンフィーレはよく売れているようだ。

精肉売場もインストア加工はないが品揃えは充実している。牛肉では、ステーキはオーストラリア産牛カタロースステーキ100g129円(本体価格、以下同)、アメリカ産牛サーロインステーキ100g249円、和牛サーロインステーキ100g599円と、和牛も含め、幅広いお客に対応した品揃えを行っている。

惣菜は、第2主通路最後、壁面側に冷蔵ケースを配置し、仕入れの商品で冷惣菜売場を構築。一方、それに続く寿司売場ではインストア製造のちらし寿司(498円)や握り寿司(598円)を陳列。

フーコット1号店がオープン、ヤオコーが子会社を通じて手掛けるディスカウントの姿とは? | リテールガイド

通路部分には常温の平台を2台設置し、インストア製造の温惣菜や弁当を低価格で提供。平台手前は揚げ物中心で、鶏唐揚げや鶏半身揚げ(498円)も販売されている。奥の平台はピザ、デニッシュパン、弁当、丼、カレーなどの米飯を集めた。

正面にはピザ各種をホールサイズのみ450円で大量陳列、鶏唐揚げ弁当298円、ハンバーグ弁当398円、うな重500円。丼プレートは、かつ重298円、唐揚げ炒飯398円、ロースカツカレー330円、唐揚げカレー330円といったように、プライスゾーンを298~398円に集めて魅力的な品揃えをしている。

いずれにしても、ヤオコーの品揃えとは異なりフーコット独自の商品開発を行っている。

日配は「8白」の価格と陳列位置に注目

日配のレイアウトは第2主通路から第3主通路に和洋日配をまとめてゾーニングしている。

主な品目の最低価格は、まず、「8白」では①充填豆腐(150g×3)69円、パック豆腐(300g)28円、②ゆでうどん(180g)29円、③白菜漬け(250g)139円、④生ちくわ(5本入り)69円、⑤無調整牛乳(1ℓ)155円、⑥プレーンヨーグルト99円、⑦卵(不揃い10個入り)99円(1000パック限り)、⑧食パン69円。

他、納豆(3段重ね)はたれ、からしなしで45円。陳列場所は最下段ではなく3段目から最上段にかけてだ。

冷蔵販売する必要のない卵、こんにゃく、豆乳など(常温保存可能の商品)は常温で販売している。豆乳は海外ではパレット販売など大量陳列を行っている店もある。卵も高速回転していれば常温販売でも問題はない。このように冷蔵ケースを極力使わないでランニングコストカットを行っている。

ドライ食品の品揃えは調味料、飲料、酒を強化

ドライ食品のレイアウトを見るとゴンドラレーンごとにめりはりを付けている。広めの売場はカップ麺、インスタント麺、油(食用油、オリーブオイル)、缶詰、乾燥珍味、ナッツ、飲料、水、炭酸飲料、酒売場だ。

特に料理に使う調味料、業務用の大容量パックをゴンドラ下段に品揃え。1㎏のパスタは185円、199円、輸入のオリーブオイルは3尺縦割りで399円、菓子コーナーではピーナツ大袋680円、柿の種大袋680円などの徳用大袋の品揃えが目立つ。

ヤオコーはワインに力を入れているが、この店は焼酎、カクテル類の売場を拡大している。

オペレーション面では、ハイゴンドラを活用し最上段にストックスペースを確保し補充動線を短くしている。また、酒類やペット飲料や水は常温販売を行うなど、日配同様、冷蔵が必要な商品以外は常温で販売することでコストを削減している。

ローコストオペレーションを支える仕組み

SMの生命線である生鮮3部門は自社センターのアウトパック商品で対応。陳列に要するコストはかかるが加工にかかるコストや設備費を大きく削減。

惣菜売場の米飯(弁当、丼)、生寿司(海鮮丼、握り寿司)、ピザ、パンはインストア製造。売場は常温平台2台に限定している。冷蔵のおかず、寿司弁当はアウトパックとした。

ドライ食品はキャスター付きの什器をエンド部分に使い大量陳列を可能にした。ゴンドラケースの最下段は、段ボール販売、投げ入れのジャンブルケースを使用し効率的な陳列も可能にした。

また、「当店のご精算は現金のみです。・クレジットカード・ギフト券・ポイントカードのお取扱いがない分、価格を安くしています。」と告知。カード手数料やポイント分を価格に転嫁して安く販売する仕組みを作っている。

ビールや飲料類、卵、こんにゃく、豆乳など冷蔵販売する必要がないものはお客には多少不便をかけても常温販売に徹している。納得のいく価格であればお客も認めてくれるであろう。

お客のTPOS(タイム、プレース、オケージョン、ライフスタイル)で店を選ぶ。新鮮な青果物、魚、肉の鮮度、あるいは魚種、惣菜の品揃え、調味料の品揃えなど「気になる商品や品揃え」があることが重要だ。

その点では、フーコットは、「野菜+精肉+調味料」「酒+水、炭酸飲料、乾燥珍味」といった視点で売場を注意して見ると、ストーリーが見えてくるようでおもしろい。(8月6日訪店)

フーコット飯能店概要

所在地/埼玉県飯能市新光1-5

オープン日/2021年8月3日

営業時間/10時~19時