イ・シヨン×キム・ソンギュン『グリッド』インタビュー “幽霊”&“殺人鬼”役に入り込んだ秘訣とは

韓国ドラマ『グリッド』に出演する(左から)イ・シヨン、キム・ソンギュン(C)2022 Disney and its related entities

俳優のソ・ガンジュンが主演を務める韓国ドラマ『グリッド』。ディズニー公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」の新コンテンツブランド「スター」にて配信中の本作は、数々の短編映画やドラマの監督を経て映画『鬼手』でも注目を集めるリ・ゴンと、パク・チョルファンが監督を務め、脚本には韓国サスペンス・ドラマの金字塔『秘密の森』を手掛けたイ・スヨンが参加。1997年、2021年、2091年という3つの時間を軸に展開する新感覚のサスペンス・スリラーとなっている。【写真】謎の女“幽霊”を演じたイ・シヨン&連続殺人鬼を演じたキム・ソンギュンかつて地球の危機を救う技術“グリッド”を生み出し、人類を救って空気のように消えた謎の女――。彼女が再び幽霊のように現れ、24年の時を経て、連続殺人鬼の共犯者として戻ってきたことから物語が始まる。今回、謎の女(通称・幽霊)役のイ・シヨン、連続殺人鬼キム・マノク役のキム・ソンギュンにインタビューのインタビューが到着した。――初めて台本を読んだときの印象を教えてください。最初から最後まで、全てのストーリーを理解した上で、撮影に臨んだのでしょうか。それとも、撮影中も次の展開を知らないまま演技をしていたのでしょうか?【キム・ソンギュン】本作の台本は興味をそそるような世界観があり、ワクワクしながら読みました。撮影中もそのときめきをずっと抱いたまま演技をしていましたね。この作品は解釈の余地が広く、同じシーンでも見る人によって解釈も違いますし、多くの演出パターン、演技の選択肢があるんです。そのため、現場では、俳優同士、そしてスタッフ同士、熱い討論を繰り広げていました。【イ・シヨン】私はもともとイ・スヨン作家の大ファンなので、「スヨン作家が書くSFドラマとはどんなものなのか」と興味津々で台本を受け取りました。台本を読んだとき、文字からも1シーン、1シーンの絵がイメージでき、なにより内容がものすごく濃くて、「完璧だ」と思い、感動しました。そして「これを具現化できたらどんなにステキだろうか。その中に私がいたら」と、胸が踊った記憶があります。先輩(キム・ソンギュン)がお話された通り、ものすごくスケールが大きい作品です。それは私が想像した以上でした。現場で全10話だと知ったのですが、イ・スヨン作家の解釈やビハインドストーリーを聞いたりしていると、「これなら50話、100話でも作れるな」と思いました。それほど、表に出ない世界が広がるドラマなんです。また、後の内容をすべて把握した上で演じていたのかという質問ですが、私たちも次の展開を知らないまま、撮影を進めていました。撮影しながら、私たちも何度も大どんでん返しの洗礼を受けました(笑)。――役作りはどのようにしましたか?【イ・シヨン】イ・スヨン作家から「幽霊のどんな面をイメージしながら台本を書いたのか」という話をたくさん聞きました。これまでのどの作品よりも、作家さんに台本に込めた思いや考え、説明を聞いた気がします。「幽霊」は、幽霊でありながら、実は明るい部分もあるんです。いくつか好きなものがあって、それに接したとき、とても明るい姿を見せます。そのギャップを演じるのが難しかったですね。どうするべきなのかについて、監督にもたくさん質問しましたし、何度も台本を修正してもらったりもしました。監督とイ・スヨン作家にたくさん助けていただきました。【キム・ソンギュン】僕はキム・マノクという役を演じながら、一匹の野獣になったような気分がしました。家もなく、友達もいない。ただ当てもなくウロウロしながら、本能のまま生きている一匹狼です。そのため、自然界で生き残るために本能的に生きる野生動物をイメージしながら役を作り上げていきました。マノクは人間でありながら人間を殺めるので、「悪人」だと表現することもできますが、違う解釈も出来ると思うんです。例えば、自然界で例えると、ライオンがうさぎを捕まえて食べるからといって、ライオンは「悪」ではないでしょう?そういう観点を大事にして演技をしようと心がけました。また、人は自分が理解できない事が起こると恐怖を感じるものです。本能的に生きる野獣のような男が、「幽霊」に出会ったとき、理解ができない存在が目の前に現れたとき感じる恐怖、そして行動とはどんなものなのか。そんなところにも思いを馳せて演じました。――思い出に残っている撮影はありますか?【イ・シヨン】初めて撮影したシーンが記憶に残っています。一話の最後に出てくる(キム)アジュンさんと初めて対面するシーンだったのですが、私は今回、人と顔を合わせるシーンも少ないですし、初めての撮影だったこともあり、普段よりも集中して演技に臨みました。朝方まで撮影しましたし、その時使用したカメラが一度も見たことがないものだったこともあって、記憶に残っています。【キム・ソンギュン】僕は、「幽霊」とマノクの初対面のシーンです。イ・シヨンさんが僕(マノク)を見つめる目を忘れることができません。それは、マノクにとってとても混乱する目だったんです。マノクは殺人を犯したのに、見ず知らずの女性が現れて助けてくれる。だけど僕を好きで助けたのでは決してなくて。友好的でもなく、好意的でもなく、若干軽蔑も感じさせるような…。とにかく心の内が見えない目をしているんです。セリフもないし。そんなミステリーに満ちた目だったので、記憶に残っています。――イ・シヨンさんが怖いくらいに役に入り込んでいたというスタッフの方の証言がありました。「幽霊」というキャラクターになぜそこまで入り込むことができたのでしょうか。【イ・シヨン】本当に「うまくやりたい」という気持ちが強かったんです。「幽霊」役は緊張しました。緊張しないわけがないですよね。出演する分量は少なくても、ドラマの中で重要な鍵を握る重要な役ですから。私が上手く演じないといけなかったのです。それに、私が「完璧な台本」だと思ったからこそ、きちんと表現したいと思いました。これまで演じたことがない役というプレッシャーもありましたし。そのため、これまでのどの作品よりも、監督を頼りました。私は自分の撮影シーンのモニタリングをあまりしないタイプなのですが、今回は、一つ一つモニタリングをして、少しでもイマイチだと思うところがあれば「申し訳ないのですが、もう一度やらせていただけませんか?」とお願いし、撮り直しました。――キム・ソンギュンさんは、これまでコメディ作品に多く出演されてきましたが、今回はかなりダークな悪役を演じています。シリアスなジャンルの作品に参加してみて、いかがでしたか?【キム・ソンギュン】コミカルな演技を封印する悪役を演じる機会をいただき、非常に感謝しています。僕は、常々「コメディだけやる」とか「悪役だけやる」と線引きをせず、いただいた役を楽しんで演じようと思っているんです。“コメディ”と“シリアス”を行ったりきたりできるのは、とてもうれしく、おもしろいことです。韓国の文化の一つに、熱湯と水風呂を交互に入る温冷交互浴というものがありますが、その魅力に似ています。【イ・シヨン】温冷交互浴(笑)。血行も良くなりますね。【キム・ソンギュン】そうそう。血行もよくなるし、ストレス解消にもなるし(笑)。俳優にも同じように「行ったり来たりする」おもしろさがあるとしみじみと感じています。――イ・シヨンさんは、これまでアクションドラマ界で活躍されてきましたが、新たに挑戦したいジャンルはありますか?【イ・シヨン】今までも、『グリッド』でも、アクションができるということ、アクションをする機会があるということ自体が、私にとっては喜ばしいことです。アクションは、やればやるほどおもしろくなっていきます。その中でできることが多いからこそ、欲も出ますし。一方で、本来私はコミカルな作品が好きなので、コミック作品や、以前流行していたシットコムのような、軽快なジャンルの作品をやってみたい気持ちもあります。――『グリッド』1話を見ると、キム・ソンギュンさんもビルからビルに飛び移ったり、縄を登ったりとアクションシーンが多かったですね。大変ではありませんでしたか?【キム・ソンギュン】イ・シヨンさんは、アクションはやればやるほど面白いとおっしゃっていましたが、僕はやればやるほど疲れます。体の衰えも感じますし(笑)。今回、『グリッド』の撮影をしながら、イ・シヨンさんや多くの先輩方のように、体作りをしっかりして、アクションシーンを楽しんでいる方に、改めて尊敬の念を抱きました。僕は極度の高所恐怖症があり、高いところにのぼることが苦手で。1話のビルを飛び越えるシーンはワイヤーを使ったアクションだったのですが、「耐えるんだ!」と力が入りすぎてしまってたくさん反省をしました。感情をコントロールする訓練をしなければ、と思いましたね。――『グリッド』を一言で表現するとしたら?【イ・シヨン】この作品は単純な話ではないんですね。ですから…なんといえばいいかな。簡単に言えば、「反転(どんでん返し)」と言えると思います。キャラクターの表に見える姿やヒストリーが全てではなく、その裏に隠された話が余りにも多いんです。私も撮影をしながら、「“幽霊”も大変な人生を生きてきたんだな」と感じましたし。【キム・ソンギュン】一言で、と言われたら難しいのですが…。宝箱ですかね?宝箱って、なにが入っているのか分からないから、開けるまでにいろんな想像をするじゃないですか。今作も、中は暗いけど何かものすごいものが入っている、そんな宝箱を開ける時のような期待感を持たせてくれます。――ファンへのメッセージをお願いいたします。【イ・シヨン】長い間、心待ちにしてくださった方々やジャンル作品ファンの方々の期待を裏切らない作品です。スケールが大きくて、観たことを後悔しない作品になっていると思います。【キム・ソンギュン】『グリッド』を10話まで楽しく観ていただき、『グリッド』の世界で僕たちとともに、心躍る経験をしていただけたらと思います。

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