インタビュー:キヤノンEOSの交換レンズ「累計生産1.5億本」の歩み——多彩な選択肢、非球面レンズ編 - デジカメ Watch

“非”球面レンズの役割

レンズに入射した光が、レンズを通り抜けた後に一点に集まること。これが理想的なレンズの条件のひとつだ。

一般的なカメラレンズには、球体の表面を切り取ったような「球面レンズ」が使用されている。しかしこの球面レンズは光が入射した際、レンズの周辺部を通る光と、中心部を通る光で焦点位置がずれてしまうという、原理的な課題がある。

焦点位置のずれは、像がぼやけてしまう「球面収差」を引き起こす。また、球面レンズでは画面周辺が歪んでしまう「歪曲収差」や、色の滲みを引き起こす「色収差」が発生しやすいという性質ももっている。

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球面レンズは、光の焦点位置にずれが生じてしまう傾向がある(参考:キヤノンビデオスクエア)

こうした収差を補正するための手段の一つは、性質の異なるレンズを様々に組み合わせること。球面収差は凸レンズと凹レンズでは反対方向に起きることから、ふたつのレンズを重ねることにより補正することができるというわけだ。

一方で、こうした諸収差を根本的に解決する手段として注目されたのが「非球面レンズ」だ。非球面レンズは、レンズ周辺部に向かって曲率を変化させていき、中心部から周辺部までを通る全ての光を1点に結像させ、収差を抑制する。複数枚のレンズを組み合わせることで収差を補正する球面レンズと比較して、非球面レンズを効果的に使用することで構成枚数が減り、製品の小型化や高画質化を実現できるという。

球面レンズで発生する球面収差非球面によって焦点位置を合致

キヤノンは1963年から非球面レンズの開発に着手し、1971年に同社初の非球面レンズを採用した一眼レフカメラ用交換レンズ「FD55mm F1.2AL」を発売。今年は同レンズの発売から50周年となる節目でもある。

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