出光興産・木藤俊一社長に聞くガソリンスタンドの展望 脳ドックから飲食店まで地域の「よろずや」に:元売りとしてサポート(1/4 ページ)

 ガソリン消費量の減少、脱炭素化への動きなどにより、石油元売り会社は大きな変革を迫られている。減少するガソリンスタンドを地域活性化のためにどう有効利用するのか。

 木藤俊一社長インタビューの前編記事【DXで飛躍する出光興産・木藤俊一社長を直撃 「昭和シェルとの経営統合」の効果は?】に続き、石油元売り大手としての出光興産の新たな役割について聞いた。

木藤 俊一(きとう・しゅんいち)1980年に年出光興産入社。営業畑が長く、99年販売部企画課長、2005年人事部次長、14年常務取締役、17年副社長を経て18年に社長就任。65歳。神奈川県出身(撮影:河嶌太郎)

――人口減少などによりガソリンの需要が落ち込んで、ガソリンスタンドの数が減っています。どう対応しますか。

 ガソリン需要は1999年にピークアウトしました。サービスステーション(ガソリンスタンド)の数も、この25年間で半減し、全国的には3万を切るところまで減りました。減少のスピードは緩くなってはきていますが、これ以上減ると、今でも表面化しつつある「サービスステーションの過疎化問題」が起きていきます。

出光興産・木藤俊一社長に聞くガソリンスタンドの展望 脳ドックから飲食店まで地域の「よろずや」に:元売りとしてサポート(1/4 ページ)

 北海道や日本海側では20〜30キロも走らないとサービスステーションがない地域が増えてきています。経済合理性だけでどんどん減らすと、津々浦々の地域にエネルギーを供給する使命を果たせなくなります。後継者問題などさまざまな事情があるので、簡単なことではありませんが、それぞれの地域の業態に合わせた展開をしていくことで、これ以上減らさないよう元売りとしてサポートしていきたいと思います。

――スタンドの新しい展開として「スマートよろずや」構想を打ち出しています。

 「地域課題を解決するために、多種多様なサービスをサービスステーションで提供できないか」という視点でこの構想を掲げています。ガソリンなど燃料油やカーケア商品の販売だけでなく、例えば飲食店、ヘルスケア、超小型EV(電気自動車)のカーシェアリング、充電サービスの提供や、ドローン基地としての活用、バイオマスなど合成燃料や水素ステーション……。地域の多様なニーズに合わせたサービスの展開を、事業者と連携して考えています。

「スマートよろずや」構想のイメージ

 全国に約6300カ所あるエネルギーの供給拠点を活用して、その地域固有の課題を解決するエコシステムを作ろうと、具体的に動き出しています。

 例えばヘルスケアでは、静岡県島田市で脳ドックの診断が手軽に受信できるMRI(磁気共鳴画像装置)を積んだ移動式サービスの実証試験をしました。装置を積んだ車をサービスステーションの敷地内に入れて、15分程度で地域の住民が手軽に低価格で診断を受けられるのが特徴です。

 この車を活用して、都市部でしか受けられない医療設備を機動的に持って行けます。また同じ島田市で、「ゴーストキッチンズ」のブランド名で知られる飲食の提供とデリバリーサービスを、サービスステーション内に停めたキッチンカーを拠点に展開する実験も始めています。病院や飲食店から遠い場所に住んでいる地域住民には便利なサービスです。

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