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初代ウォークマン『TPS-L2』(1979年) 画像提供/ソニーグループ広報部
世界的な品切れ状態を呼んだゲーム機『PS5』や、社会的ブームを巻き起こしたアニメ映画『鬼滅の刃』などが大ヒットを記録し、好調な業績を上げているソニーグループ。創業以来、技術とコンテンツの両軸で、次々と革新的な商品を生み出してきた同社は、昨年5月75周年を迎えた。今や世界に名を轟かす“ソニーブランド”の根幹を支えているのが、常に時代を先取る新たな“音へのこだわり”。日本の音楽史に残る革新的な音楽体験を次々と生み出してきた、ソニーの本懐とは?【写真】日本の音楽産業の発展はここから始まった…大きくて重たそうな日本初のテープレコーダー『G型』
■〈音〉は、ユーザーを感動に導く大事な媒体の一つ、着目するのは必然
多くの革新的製品を生み出し続け、いまやその名を世界に轟かせるソニー。その快進撃の始まりは、1950年、創業者の井深大氏と盛田昭夫氏らが作り上げた日本初のテープレコーダー『G型』に始まる。55年に発売した日本初のトランジスタラジオ『TR-55』からは、「世界中を相手に仕事をする」という決意の表明として、『ソニー』ブランドを制定し、製品に表記。世界最小のトランジスタラジオ『TR-63』で世界にその存在を知らしめると、58年には社名も東京通信工業からソニーへと変更。その名の由来は「音(SOUNDやSONIC)」の語源となったラテン語のソヌス(SONUS)と、「小さい」「坊や」という意味のサニー(SONNY)。2つの言葉を掛け合わせ「小さくても、はつらつとしたやんちゃ坊主」という意味を込めたというから、並々ならぬ音へのこだわりを計り知ることができる。 同社で40年間、イヤホンなど「音」にまつわる開発に携わってきた投野耕治氏(シニア音響アーキテクト)は言う。「ソニーの存在価値は『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』と定義されていますが、それは創業者の精神が今に受け継がれています。音楽などの〈音〉は、お客様を感動に導く大事な媒体であり共通言語のひとつ。ですから、弊社が〈音〉に着目するのは必然ではないかと考えています」 この言葉の通り以降も、世界を驚かすことになる『ウォークマン』や、海外企業と共同で開発した『CD』や、『MD』をはじめとする新しい記録メディア、小型の再生装置の開発、さらには『ハイレゾ』を含む音質の追求など、その社史は日本の音楽文化・産業と密接に関わり、各時代で音楽史に残るような革新を起こしてきた。「ソニーの誕生以前から、音楽と音楽産業は密接に絡み合い、オーディオ技術進化に伴って共に進化してきました。例えば、20世紀初頭にマイク、アンプ、スピーカーのオーディオが出来たことで、それまで1000人の観客を楽しませようと思ったら100人のオーケストラが必要だったところを、4人の演奏家で楽しませることが出来るようになった。音楽産業が変化し、アーティストの表現自体も変化していったのです。また、録音技術とラジオの発明によって、コンサート会場でなくても国中で音楽を楽しめるようになりました。レコードのような物理記憶メディアの発明で、国境を越えて、世界中のお客さん相手に音楽を伝えられるようになりました。そのなかで特に近年は、手前味噌ではありますが、ソニーの貢献も大きいものがあったと思います」(投野氏)
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最終更新:オリコン