ライフハッカー[日本版]2021年9月5日掲載の記事より転載
世の中には、優れたBluetoothヘッドフォンがいくつも出回っています。
AirPods Pro、Sony WF-1000XM4、Jabra Elite Active 75tはイヤフォン市場を席巻しており、Sony WH-1000XM4やBose Noise Cancelling Headphones 700はオーバーイヤータイプの中でも特に優れています。
しかし、これらのヘッドフォンは、さまざまな状況で高度な音質を提供できるものの、有線のヘッドフォンほど音質は良くありません。その理由を以下にご説明します。
ストリーミング・サービスは最近、オーディオ品質を向上させました。
この1年でApple Music、Amazon Music、Spotify(近日公開予定)など他のサービスも同様に高ビットレートのロスレス・サービスを提供しており、どれもこれまでと同じ料金で利用できます。
オーディオ品質とは?
こういうバズワードを聞いてもピンとこない人のために、もう少し詳しくご説明します。デジタル音楽は、他のデジタル製品と同様に、デジタル情報(1と0)で構成されています。
1つのファイルに収めることができる情報量が多ければ多いほど、オーディオ品質は向上します。できるだけ多くの情報を得て、その曲の魅力を目いっぱい味わえたら理想的です。
しかし、情報は容量を占有します。ファイルの情報が多ければ多いほど、そのファイルが占める容量は大きくなり、ストリーミングの負荷も大きくなります。
この問題を解決するために、ストリーミング・サービスはファイルを圧縮したり、情報を削除したりしています。
十分な情報を削除してファイルサイズを小さくしつつ、多くの人が楽曲の質の低下に気づかない程度の情報を残すという戦略的です。
これにはビットレートが関係しています。ビットレートとは、あるファイルで転送できるデータ量のことです。
ファイルのビットレートが高ければ、より多くの情報を転送することができ、多くの場合、品質が向上します。ビットレートが低ければ、転送量が少なくなり、品質が低下します。
ロスレス・ストリーミングでは、この圧縮をほとんど行わず、オリジナルの録音素材に限りなく近い状態で聴くことができます。
ワイヤレスヘッドフォンが有線ヘッドフォンに勝てない理由
Bluetoothは、処理できるビットレートに限界があります。
たとえ、Apple Musicなどのストリーミング・サービスをロスレスで再生するように設定しても、それらのファイルはそのBluetoothデバイスで可能な範囲で圧縮されてしまうため、ロスレスにはなりません。
しかし、楽曲の音質が悪くなるわけではなく、むしろ逆です。例えばApple Musicでは、Bluetoothヘッドフォンで音楽を再生する際にAAC Bluetoothコーデックを使用しており、そのビットレートは256kbpsです。
Spotifyの最大ビットレートは320 kbpsです。こういうビットレートなら、Bluetoothヘッドフォンでも高音質になります。
ソニーの主力製品であるWF-1000XM4でさえ、最大ビットレートは990 kbpsです。これは従来のBluetoothオーディオの約3倍のビットレートですが、ロスレスにはまだ足りません。
一方、有線のヘッドフォンには、この圧縮の問題がありません。
音源となるデバイスからの信号をフルに処理できますが、場合によっては、音源となるデバイスの方がヘッドフォンを扱えないこともあります。ヘッドフォンによっては、その良さを十分に引き出すために、さらにパワーが必要なものもあります。
そこで、ファイルの品質とヘッドフォンの品質を両方サポートするために、DACのようなユニットが必要になります。例えば、Apple Musicで最高ビットレートのロスレスを楽しむには、どんな有線ヘッドフォンを使っていてもDACが必要です。
とはいえ、有線ヘッドフォンもピンからキリまである
公平を期して言えば、世の中にはさまざまな有線ヘッドフォンがあります。有線だからといって、AirPodsより音質が良いとは限りません。
ワイヤレスのイヤフォンやヘッドフォンの多くは、素晴らしいサウンドにするテクノロジーを搭載しています。
そういう機能がない安価な有線ヘッドフォンは、ストリーミング・サービスが送信するロスレス信号を取り込めても、圧縮されたフォーマットではAirPodsのほうがはるかに高音質になる可能性が高くなります。
ビットレートだけでなく、ヘッドフォンがどのように音を作るかも重要です。
いつの日か、ワイヤレスの技術でロスレス信号を直接耳に届けられるようになるかもしれません。しかし、今のところ、その技術は有線のヘッドフォンに限られています。