【時視各角】防犯カメラが戦争を中継する時代

1991年の湾岸戦争はテレビで生中継された初の戦争だ。CNNが西側メディアとしては唯一米軍のイラク・バグダッド侵攻を生放送し、放送報道の新たなページを開いた。CNNは世界的報道チャンネルとして急浮上したが、当時テレビカメラの中で夜空に砲弾が爆発する場面はビデオゲームの一場面のようだった。お茶の間にゆったり座って他人の悲劇を実感あふれるゲームのように消費する「戦争のエンターテインメント化」という批判が出た。米国人がこの戦争に特に道徳的な呵責を感じなかった理由にも挙げられる。「アラブのCNN」と呼ばれるカタールの衛星放送アルジャジーラは2016年にイスラム国が掌握したイラク北部の都市モスルをイラク政府軍が奪還する戦闘を英国のチャンネル4などとともにフェイスブックで生中継した。ブルームバーグによると「報道機関が軍事作戦をフェイスブックライブで長時間中継した初の事例」だ。イラク政府軍は軍人が体にカメラを付けて撮影したリアルなボディカメラ映像を提供した。オンライン世論戦にたけていたイスラム国に対抗しリアルな戦闘そのものを見せるという趣旨だったが、残酷な悲劇を見世物にしたという批判も少なくなかった。今回のウクライナ戦争でもSNSは猛活躍中だ。ロシア軍の兵力移動から建物爆破、市民の抵抗、避難行列など緊迫した状況がユーチューブとティックトック、ツイッターなどを通じて全世界に中継されている。身ひとつで戦車を防ごうと立つ市民、火炎瓶を投げる市民、戦場に向かうため幼い娘と別れる父親などの映像はひとつやふたつではない。手の平の上のSNSで生々しく伝えられる戦争の悲惨さに世界の人たちが憤怒した。ウクライナ政府もSNSを積極的に活用している。ゼレンスキー大統領はフェイスブックを通じて戒厳令を宣言し、その後も自身のSNSで国民向けメッセージを出し決死抗戦の意思を確かめ合っている。政府各省庁もやはりSNSを通じて戦時状況を内外に伝えている。SNSには戦争中断と平和を祈る世界の人たちのハッシュタグリレーも盛んに行われている。戦争はサイバー戦線にも拡大した。ウクライナ政府がロシアのサイバー侵攻に対抗しIT部隊の創設計画を発表し、世界のハッカーが志願した。すでに国際ハッカー集団アノニマスはロシア国営テレビのハッキングとロシア主要機関のホームページへのサイバー攻撃の背後は自分たちだと明らかにした。路上の防犯カメラが現場を中継したりもする。ユーチューブには「ライブカメラ」「リアルタイムウクライナ状況」などの題名でキエフなど主要都市の各地に設置された防犯カメラ映像をそのまま見せる内外のチャンネルが複数ある。ほとんど特別な内容はないが、いつどんな紛争が起きるかもわからないとして見守る人たちが多い。いまは映像を削除しているが、つい最近までKBSとMBCの韓国の公営放送のユーチューブチャンネルでもこの映像を配信していた。一部の防犯カメラはIPアドレスが公開されているため、だれでも簡単にその画面を見たり転送できる。特別な取材と加工のない24時間観察するカメラが一部で戦争中継者の役割をする格好だが、どこかばつが悪い。ありのままを早く見せるという趣旨だが、特別なことのない平和で日常的な映像よりは戦争映画のようなスペクタクルと衝撃的映像を期待する観淫症的欲望の作動を否定しがたい。この防犯カメラの画面を見ながらなぜかジョニー・デップ主演のSF映画『トランセンデンス』が思い浮かんだ。天才的な脳科学者が全世界のネットワーク、データ網を連結してすべての情報を集積した後それを人工脳に移植し死後も不滅の存在になるという内容だ。全世界の防犯カメラを一気につなぎ途轍もないデータを蓄積する場面に背筋が寒くなった記憶がある。もちろんこれは行き過ぎた映画的想像力だが、やろうと思えば地球の反対側から自分の家の前の防犯カメラ映像を見ることができる時代を生きているという事実を改めて思い知ることになる日だ。デジタル情報技術は戦争も、暮らしもこのようにすべて変えている。ヤン・ソンヒ/中央日報コラムニスト

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