CycloTechが開発したeVTOL(出典:CycloTech)
このタイヤのようなものが、ローター。このローターは、Wings、Hub、Conrodの3つから大きく構成されている。
回転するHubは、Conrodと呼ばれるロッドを通じてWings(翼)と繋がっていて、Hubが回転することで、ConrodもWingsも回転する。Hubが回転中にWingsの向きを変えることで、推力を発生させることができる。
また、驚くのは、推力の方向を360°自由に変えることができる点だ。これがすごい。つまり、上昇、下降もしかり、後方へ進むこともできるということになる。
実は、このローターは、Voithの「Voith SchneiderPropeller」という船などの動力源の設計に基づいて開発されたという。この飛行体の速度や飛行時間などは不明だ。
■ローターの揚力や推進力の原理の動画(※外部サイトに遷移します)
CycloTech初飛行に成功
2021年10月10日、CycloTechは自社で開発したローターを有するeVTOLの初飛行に成功している。この初飛行は、屋内で行われていた。
動画には、バックグラウンド音楽も流れているので、ローターの回転による騒音がどれくらいのものなのか確認はできないが、数mほど離れたスタッフなどは、ヘッドホンなど耳を防護するプロテクターをつけていない様子をみると、想像以上に静かなのかもしれない。
そして、機体が安定した状態で高さ1~2mくらい浮上し、縦横無尽に動く性能の高さを公開している。飛行時間としては約1分のものだが、とても不思議な感覚になる動画だ。また、初飛行の様子の動画が公表されているので、ぜひご覧いただきたい。
CycloTechの初飛行の動画
いかがだっただろうか。CycloTechのローターの強みは、何といっても360°自由自在に推力を発生させることができる点。これにより、他の飛行体比べて正確な操縦性が可能となるという。
他にも強みがある。このローターは、垂直軸型の風力発電にも活用できるという点だ。つまりCycloTechは、再生可能エネルギー事業にも参入しているのだ。このCycloTechの開発したローターにとてつもない将来性を感じるのはわたしだけだろうか。
齊田興哉
さいだともや
2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。 現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。Youtube:元JAXA職員、齊田興哉 Twitter:@rinocerontepad
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