3年前の春、弊社Webサイトから1通のメールが届きました。その年の1月にエンターテイメントロボット"aibo"をリリースしたばかりのSony AIロボティクスチームからでした。
エンタメロボット分野以外の産業をいろいろ検討しており、ドローンについてビジネスや市場の話を聞きたいとのこと。その後来社いただき、2時間以上いろいろと好き勝手にお話をさせていただいたのを覚えています。
それから3年、ついにSony製のドローンが世の中にお披露目されました。今年6月に開催された「Japan Drone 2021」ではいちばんの注目ブースとなり、実機を見た誰もがはやく一度触れてみたいという衝動に駆られたことでしょう。
そして先日、ついに開発中の機体を使って国内初となるフライト体験会が先行開催となり、筆者もお声がけいただいたのでその様子をレポートします。
※機体・ソフトウェアは現在も開発中となっており、9月の製品リリース時の仕様とは異なる場合があります
Airpeakは「プロフェッショナルサポーター」制度を作っており、ユーザーに体験してもらい、そのフィードバックからさらに作り上げていく共創活動を軸のひとつとしています。今回はその先行体験会となっており、すでにAirpeak開発チームとコミュニケーションを取っていた数名に声をかけての開催となりました。
今回使用する機体はまだまだ開発中のものとのこと。体験フライトもマニュアル飛行による直径約230m×高度120mの範囲で行われました。注目の搭載カメラは当日は高感度のα7S。残念ながらカメラの録画映像はいただけなかったのですが、基本的な飛行機能について試すことができました。
当日は、事前のかんたんな基本仕様・注意事項説明ののち、さっそくフィールドに移動してフライト体験です。それにしてもSony製のフルサイズカメラα1・α9・α7R・α7sシリーズ、そしてシネマカメラFX3まで搭載(レンズは14mm〜85mm)できるというのは改めて魅力的です。
Airpeak S1のフライト第一印象は"思った通りの軌道にかんたんに乗せることができる"飛行精度です。メーカー製作第一弾の機体がこの高精度とは…と体験したすべてのパイロットが驚いていました。さっそく、当日のパイロットたちによるフライト映像を見ていただきながら、ファーストインプレッションをお伝えします。
動画の音声を聞いていただくと少しは伝わるかもしれないのですが、プロペラ音はサイズの割にとても静かでした。機体サイズはDJI Inspire 2やMatrice 200シリーズとさほど変わらないのですが、両機のような少し図太い低音のプロペラ音はありません。これならば撮影時にキャストに威圧感を与えることも少ないのではないでしょうか。
飛行モードは3種類から選択可能で、今回はALT(DJIでいうこところのATTIモード)は封印されていました。選択はプロポの左上にあるスイッチで行います。
今回のフライト体験ではStdモードでフライトさせていただいたのですが、冒頭お伝えしたとおり"思った通りの軌道にかんたんに乗せることができる"というのが印象。これは、独自機能の「オンコース」という設定によるもので、遠心力による機体の横滑りを抑え、パイロットの意図に沿ったスムーズな旋回飛行をサポートするというもの。
通常、旋回時にはラダー(回転)+エルロン(横移動)の操作を入れることによって遠心力で外側に広がる軌道を抑えつつ機体の向きを変えるのですが、「オンコース」機能を使うと極論ラダー操作のみで意図したどおりに旋回軌道を取ることが可能でした(オンコース機能はOFFにも設定可能)。
とはいえ、いつものクセで旋回時にどうしてもエルロンを入れてしまうのですが、意図通りの軌道に乗せるのが微調整なしでかんたんにできる感じでした。
しかし、反面、デフォルト設定だとパイロットの細かい操作が反映されない(細かい操作ブレを吸収して安定飛行を維持している印象)感じだったので、そこが少しストレスでもありました。ただ、Velモードでは加速レートや最大斜角なども個別に設定可能なので自分好みの動きにカスタマイズできる可能性も感じました(当日は試せず…)。
機体の運動性能の良さは映像を見てもらえばわかるかと思います。それなりにサイズ感のある機体ながら、設定によって機敏に動きます。クルマや電車などの速度を出しながら移動する被写体の撮影にも問題なく対応可能なのではないでしょうか。
11inchレベルのiPadが装着されたプロポで操縦したのですが、普段DJIのプロポを使うことが多い筆者には少し大きく感じました。ただ、ここは慣れで吸収できる部分かもしれません。
プロポはHDMI出力や拡張用USB出力、カスタマイズボタンなども搭載されているので仕様は標準的。HDMI出力も試させていただきましたが、特に映像の遅延がひどくなるようなこともなく利用することができました(1080/60fpsで出力)。
また、カメラ操作と機体操縦を分けた2オペレーションにも対応しており、接続は各プロポとも機体と通信する方式(DJI Inspire 2はマスターとスレーブプロポの間で通信)なので、カメラオペレーションとして利用するだけでなく、少し離れた場所にいるクライアントに映像をリアルタイムで見せることもできそうです(現状は2プロポ接続するとカメラ設定がスレーブ側に固定されてしまうとのことなので注意が必要)。
加えて個人的な要望ですが、プロポ右上にあるダイヤルにカメラのパン操作(横軸回転)を割り当てできると、ワンオペレーションでもチルト・パンの操作ができるのでワンオペ派の筆者にはうれしいのですが…ニッチなニーズかもしれません!(DJI Cendenceプロポは可能なのでInspire 2をワンオペする際に使っています)
短い体験時間や開発中の機体ということで、今後試したい機能・特徴はまだまだ尽きません。例にあげると…
まだまだ基本操作のみですが、フライト体験を通して感じたことは幅広いニーズに対して答えを持っている機体であるということでした。
このあたりの機能により、ドローンの上級者はもちろんなのですが、Sonyのαシリーズを利用しているプロカメラマン(ドローン初心者)でも運用できる可能性を感じました。
まだ触れられていない機能が多く"もやっと"感が残っているのですが、製品発売の9月までの進化がとても楽しみです。また触れる機会があれば次はもっと詳しくレポートしたいと思います。