人工知能(AI)の技術は日々、進歩しています。現在のAIは、決められた作業だけをこなす「特化型」ですが、人間並みにさまざまな作業をこなせる「汎用(はんよう)型AI」の開発が進められています。
汎用型が登場すると、人間の仕事はほとんど代替されるとの説も。人間はどうしたらいいのでしょうか。そもそも本当にそんなAIは実現するのでしょうか。
AIが雇用に与える影響について研究している、駒沢大経済学部の井上智洋准教授が解説します。
米国では金融系の雇用が減少
――AIが雇用に及ぼしている影響は、現時点でどのようなものがありますか。
米国ではAIによって、保険の外交員、資産運用アドバイザー、証券アナリストといった金融系の職業で雇用が減りました。資産運用アドバイザーについては、「ロボアドバイザー」といわれるアプリが、どんな投資信託を買ったらいいかなどをアドバイスしてくれるからです。
株などの取引をするトレーダーやパラリーガル(弁護士助手)の仕事についても代替が進んでいます。
一方で、日本でも少しずつ代替は起きていますが、まだなんだかんだで「人」を好んでいて、米国よりも影響はさらに小さいようです。
――日本で「人」が好まれているのはなぜでしょうか。国民性も関係しているのでしょうか。
日本人の大人はOECD諸国の中で、国語の読解力や数学的思考などの知的レベルはトップクラスなのに、ITスキルだけスコアが低くなっています。
理由として考えられるのは、一つ目は、やはりものづくりの国であること。目に見える物を扱うのは得意ですが、抽象的な概念を操作するのが少し苦手な気がします。
二つ目は、経営者の「デフレマインド」です。新しい技術に飛びつかないで保守的になっています。アニマルスピリッツ(野心的な投資を行う心)がなく、AIにも懐疑的で及び腰でした。
江戸末期や明治のころ、外国人の目にうつる日本人は「強い好奇心を持っている」というものでした。こうした傾向は戦後まで続いていましたが、デフレ不況で失われてしまったように思います。
AIによる失業の深刻化は頭脳労働から
――コロナ禍でそうした意識に変化はありましたか。
手の届かない背中をかくため、人間は「孫の手」を発明しました。では、AIは同じように問題解決ができるでしょうか。その問いにこそ、これからの時代を生き抜くヒントが隠されているようです。
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