「強制収容所の悪夢を思い出す恐ろしいシャツです」
イタリアのファッションブランドのジョルジオ・アルマーニがアメリカで販売していたシャツが、ホロコースト時代にユダヤ人が強制収容されていた収容所の囚人服に似ているということで、ネットが炎上していた。そしてアメリカのユダヤ団体で反ユダヤ主義と戦っているStandWithUsが、このシャツを販売しないようにと申し入れを行い、アルマーニは囚人服に似ているシャツの販売中止をした。このシャツはアルマーニの2021年の春夏メンズコレクションの1つで、カリフォルニアのビバリーヒルズのアルマーニの店舗に展示されていた。また同社のインスタグラムでも公開されていた。
ユダヤ団体のStandWithUsのCEOのロズ・ロートシュタイン氏は「攻撃的なシャツだ」と指摘し、アルマーニに謝罪と商品撤去を要求していた。同団体では「ホロコースト時代に強制収容所で労働をさせられたユダヤ人が着用させられたシャツにそっくりで、あの悪夢を思い出させるような、恐ろしいシャツです。誰にとっても嫌なデザインです。アルマーニはしっかりと考えて、このような理性ない"スタイル"のシャツを撤去すべきです」と声明を発表していた。この抗議を受けてアルマーニは商品を店舗から撤去し、インスタグラムからも削除した。
毎回"大炎上必至"の「ホロコースト・ファッション」
第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。欧米や中東諸国では現在でも反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人はSNS上でもヘイトスピ―チや民族憎悪の対象になりやすく、このようなホロコーストに関する商品に対しては非常にセンシティブである。
ホロコーストやナチスドイツに関するファッションや商品は販売されると必ず炎上する。今回のアルマーニのシャツのようにユダヤ人が収容所で着ていた囚人服に似ていたり、ユダヤ人が差別されるために着用を義務付けられた黄色のダビデの星をつけた服など露骨なファッションが多い。そのような商品は「ホロコーストの犠牲者に対する敬意がない」「生存者や家族が見たら、どのような思いをするのか考えよう」と毎回炎上する。また囚人服やダビデの星など露骨な反ユダヤ的なファッションについては世界中のユダヤ団体やホロコースト博物館、著名人らも反対や商品の撤収をSNSで呼びかけることから、いっそう話題になる。今回もそのパターン通りである。
だが、それでも懲りずにこのようなホロコーストを想起させるような商品が登場してくる。毎回「ホロコースト関連のファッションを販売する」→「ネットで炎上し、拡散される」→「商品を撤収したり、謝罪する」の繰り返しで、もう欧米では過去に何回もあった。一方で、ホロコーストをテーマにした商品やファッションは、必ず炎上するので、それによって拡散し、話題になるので知名度を高めたり、サイト内の他の商品を見てもらおうとマーケティング目的で行われるケースもある。
▼アルマーニが販売していた囚人服に似ているシャツ(StandWithUs提供)
▼アウシュビッツ絶滅収容所で実際に収容者が着用させらていた囚人服(アウシュビッツ博物館提供)
▼アウシュビッツ絶滅収容所の生存者と家族が当時の囚人服を着てホロコースト犠牲者の追悼を行う「March of Living」イベント
▼StandWithUsのCEOのロズ・ロートシュタイン氏はツイッターでも訴えていた。