「空の産業革命」とも言われるドローン。 そんなドローンの技術を学べる学校があるのをご存知でしょうか?その名も「ドローン大学校」。2016年8月に建学した一般社団法人ドローン大学校は、ドローンの安全な運航に必要な知識と技術の修得をミッションとして「東京キャンパス」「名古屋キャンパス」「瀬戸内キャンパス」「博多キャンパス」と全国4カ所でプログラムを展開しています。そんな気になるドローン大学校を体験してみたい!ということで、タレント/ソフトウェアエンジニアであり個人的にも「DJI Spark」という小型のドローンを利用している池澤あやかさんと一緒に、体験入学してみました。
ドローンをなかなか飛ばさない!? 何よりも大切なことは「安全」
今回お邪魔したのは、実技1時間目。ドローン大学校のプログラムは、1日14時間を8日間行うという短期集中型。実技だけではなく、座学も重視しており、この日の前日も朝9時から休憩を挟みながらも夜11時までみっちりと勉強していたのだそう。朝から千葉県のグラウンドに集合し、挨拶。ピリッとした空気の中、機材やこの日のプログラムを確認していきます。詳しくは後のインタビューで紹介しますが、実はドローン大学校の生徒さんはみなさんドローンを仕事にしようというプロ志望の方々ばかり。真剣そのものです。練習用のコースを作ったら、さあ、早速ドローンを飛ばしましょう!...とはいきません。ドローン大学校が掲げるミッションは「ドローンの安全な運航に必要な知識と技術の修得」。そう、ドローン大学校はドローンを飛ばす前の点検を重視しているのです。そもそもドローンを飛ばせる場所なのか、危険なものは周りにないのか、そして風速に問題はないのかをチェック。もちろん、ドローン自体の点検も一つ一つ丁寧に行います。環境と機材、両方を確認して、ようやくフライト開始!プロペラが風を切る音とともに、ドローンが浮き上がります。用意されたコースをずれることなくドローンを操縦できるよう、手信号に合わせて軌道修正しながら、基本操作を学んでいきます。通常ドローンはGPSを使った補正をかけることで、まっすぐ動かすことができます。しかし、ドローン大学校ではそうした補正をかけず、マニュアル操作によってドローンを正確にコントロールできるようになることを目指しています。どうしてそこまで本格的な操作を求めるのでしょうか? 代表理事の名倉真悟さんにお話を伺いました。
ドローン大学校の生徒は"プロ志望"ばかり
――池澤さん、ドローン大学校のプログラムを体験してみていかがでしたか?池澤:そもそも、東京ではなかなか飛ばせる場所がないこともあって、あまり飛ばせる場所がないんですよね。だから、こうして操縦の練習をすること自体が新鮮で、本当に貴重な経験だと感じました。今日はちょっとだけの体験でしたけど、これを繰り返したら間違いなく上手くなるだろうなという感触がありました。――ドローンのプロフェッショナルを育成するドローン大学校ですが、そもそもどうしてドローン大学校を開校しようとしたのでしょうか?名倉:ドローンは空の産業革命と言われていますが、産業革命だとしたら最初にやるべきは人材の育成だと判断して学校を作りました。日本で徹底してドローンの安全な運航方法を指導している学校はないので、ドローン大学校がドローンスクールのモデルになれればいいなと思っています。――ドローン大学校を受講している人は?名倉:ほぼ100%がドローンを仕事にしようとしている人たちです。今日も普段ヘリに乗っている空撮カメラマンや、過疎地での物流をドローンでやりたいという人だったり、撮影だけじゃなく、あとは土木建築や測量関係の方ですね。池澤:オープンキャンパスセミナーといって、最初の授業を3000円で体験受講してもらうようにしているんですけど、その段階で「趣味の人は他の学校に行ったほうがいいです」と言っています。厳しすぎて嫌になっちゃうと思うんですよね。池澤:どこらへんが厳しいんですか?名倉:ドローンを仕事で扱う上で一番やってはいけないのが事故です。事故を起こすとどこからも呼ばれなくなりますからね。そのため事故を起こさないように考えて行動できるように叩き込んでいます。ドローン大学校 代表理事 名倉真悟1962年大阪府生まれ。立教大学大学院卒。長年に渡り事業構想のコンサルタントとして事業を継続してきたが、その傍ら慶應義塾大学医学部で研究員として先端技術に関わる研究を行ううちにドローンに大きな未来を感じ、JUIDA操縦技能証明証・JUIDA安全運航管理者証明証・JUIDA認定講師の資格を取得。2016年に一般社団法人ドローン大学校・株式会社ドローンラボをローンチ。現在は代表理事/理事長として、東京・名古屋・瀬戸内・博多の各キャンパスでドローンビジネスを目指す方の育成の傍ら、株式会社ドローンラボの取締役として、国内外のドローンメーカー・ドローンアプリケーションベンダー・ドローンインテグレートカンパニーと提携し、機体・アプリケーション・ドローンビジネスのカリキュラムデザインを行っている。
GPS制御なし、マニュアルでドローンを操縦できることの大切さ
――ドローン大学校ではGPSの補助を切って操縦しているようですが、その理由は安全性によるものなのでしょうか?名倉:そうです。JALやANAの飛行機も飛行中大半の時間は自動運転なのですが、コクピットには操縦士が座っています。それはオートパイロットに万が一異常があった場合など、マニュアルに切り替えて飛行できるようにするためです。そして、そういう手動運転が必要とされるシーンというのは緊急事態であって、普段の飛行よりも高い技術を求められるシーンですよね。それはドローンも同様で、強風が吹いたり、雨が降ってきてどうしようもない時に操縦できる人じゃないとプロとしてはダメなんです。池澤:私が普段使っているDJI SparkはGPSの補助が効いているんですけど、今日使わせてもらったDJI Phantomは全てGPSを切って使いました。すごく操縦が難しいと感じだんですけど、もしもの時の運転技術を学ぶにはこれに慣れないといけないんですね。名倉:またドローンが必要とされる現場ではGPSが使えないことが珍しくありません。今のドローン業界では、仕事としてシェアが大きいのは点検なのですが、トンネルの中ではGPSが入りません。コンサートの撮影にドローンを使うにしても、東京ドームの中など屋根がある場所ではGPSが効きません。本当にドローンが必要な場面というのは、GPSが効かない場所だと言ってもいいと思います。池澤:実技だけでなく座学にもかなりの時間を割いているようですが、授業ではどこまで扱うんですか?名倉:知識を詰め込むのはもちろんですが、飛行の許可申請や手続きなども先生の前で一から全部行います。――すごいですね!名倉:いや、全然すごくないですよ。だって、車の免許だって路上で練習するじゃないですか。でもほとんどのドローンスクールって、体育館の中で練習して終わりなんです。実際の運用は外で行うのに、体育館で終わるなんて、まるで教習所内で終わるのと同じですよ。多くのドローンスクールは甘すぎます。ドローンの夢はまだ始まったばかり 一般的には空撮カメラとしてのイメージが強いドローンですが、米アマゾンはドローンを用いた配送サービスをテストし、セコムも民間防犯用ドローン「セコムドローン」を2015年から提供開始するなど、幅広い分野で注目を集めています。そこで求められるのが、優秀なドローン操縦者。そんなプロフェッショナルを育成し輩出しているのが、今回取材したドローン大学校です。趣味ではなく、仕事としてのドローン操縦にフォーカスしているからこその厳しい安全性の追求と、高いレベルを要求する授業は「趣味人が使う空撮カメラ」というドローンのイメージとは全く異なるものでした。今後各分野でさらなる活躍を見せるであろうドローン。それを操縦しているのはドローン大学校の卒業生たちかもしれません。ドローン大学校プロフィール: 池澤あやか1991年 東京都出身。第6回東宝シンデレラオーディション審査員特別賞受賞。情報番組をはじめとするTV番組への出演やメディア媒体への寄稿を行う一方、フリーランスのソフトウェアアエンジニアとしてアプリケーションの開発に携わる。