モハメド・ナジブ
ラマッラー:イスラエル軍が、ヨルダン川西岸地区の主要道路に配置された高機能の赤外線カメラなど、さまざまな電子装置を通じて、ヨルダン川西岸地区の占領とガザ地区の監視をデジタル化したため、すべてのパレスチナ人が監視下にあるとセキュリティ専門家たちは警告する。
赤外線カメラは、映像を分析し、軍隊に指示を出す治安当局の専門職員が配備された中央管理室に接続されている。
監視カメラが捉えた顔と車両ナンバープレートの映像は、解析のために、「シンベット」と呼ばれるイスラエル公安庁に送られる。
イスラエル軍にも、携帯電話を使って顔をスキャンすることによって人物を認識できるソフトウェアが与えられている。
このシステムは主に、パレスチナ人がイスラエルの検問所を通らなくてはならない、ヘブロンの旧市街で使用されている。このソフトウェアを使うことで、100メートル先から近づいてくる人物をスキャンし、ほかのセキュリティシステムによって保存された情報に基づいて、その人物が指名手配されているか、脅威であるかどうかを特定することができる。
ガザと接する国境では、イスラエル公安庁は高解像度カメラを付けた風船を使用して、パレスチナの抗議者やデモ参加者の顔を識別している。
脅威として識別された場合、標的として狙うために、その人物の詳細が狙撃兵へと届けられる。また、これらの高機能カメラは、車両が疑わしい人物に属しているかどうかを判断するために、ガザ内を通過する車のナンバープレートを数キロ離れた距離から読み取ることもできる。
西岸地区沿いにある15の検問所で、イスラエルは、毎日、同国に入国するパレスチナ人の入国書類のチェックを手動から、所持者を識別するために、磁気カードを用いたスマートシステムへと変更した。入国の可否は、治安に関する身分証明に基づいて決定される。
イスラエル当局は、デジタル化によってパレスチナ人の入国手続きが円滑になると主張しているが、西岸地区の300万人、東エルサレムの35万人、ガザの200万人のパレスチナ人に対する、55年間におよぶ占領を強化するために導入されただけだと多くの人が反発した。
2021年末、イスラエル軍は、西岸地区のユダヤ人入植者に対し、イスラエルの完全な行政・治安管理下にあるC地区におけるパレスチナ人の建設工事を監視することを許可した。
入植者には、近隣のパレスチナ人村での新しい家の建設を監視し、その活動についてイスラエル軍に報告するために小型のドローンが与えられた。
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— cybertroner Thu Jan 14 21:48:23 +0000 2021
治安のための緊密な連携をイスラエルと保っているパレスチナ自治政府であっても、新しいデジタルセキュリティの恩恵を受けてはいない。
パレスチナの警察高官は、2021年10月25日に、ジェニン近郊のヤアベドの町で、2人の武装した強盗犯がパレスチナ銀行を襲い、分離壁の穴からイスラエルへと逃げた際、パレスチナ自治政府警察はイスラエル警察に監視カメラの映像提供を依頼したが、イスラエル側は要請に応えなかったと、アラブニュースに対して説明した。
ソーシャルメディア・プロフィールの監視、携帯電話に対するソフトウェア「ペガサス」の使用、ドローンによるヨルダン川西岸とガザ地区の24時間体制の見張りは、何百万人ものパレスチナ人に対するイスラエルのデジタル占領を強化するものだ。
これが十分ではないかのように、イスラエル政府はFacebookやInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームに対し、特に暴力が激化する最中に、パレスチナ人のアカウントを停止することでパレスチナ人の声を封じるよう圧力をかけた。
イスラエル人の安全保障専門家・アナリストであるエヤル・アリマ氏は、2014年の大規模な暴動で、イスラエル人を狙った個人の攻撃を抑止できなかったため、イスラエルの治安当局は諜報活動の方法を変更せざるを得なかったとアラブニュースに説明した。
「今起きているのは、携帯電話、ソーシャルネットワーク、インターネットの継続的な常時監視に加え、道路に配備された赤外線カメラや一部の地域に設置されたセンサーによる西岸地区の広範な諜報活動だ」とアリマ氏は指摘した。
「どんな攻撃もイスラエルの治安当局に監視されずに実行できる人はいない」とアリマ氏は述べ、このことは暴力に関与した人々が急速に逮捕された西岸地区での最近の治安作戦によって証明されたと付け加えた。
アリマ氏によれば、西岸地区に住むすべてのパレスチナ人がこれらのデジタルシステムの管理下にあるという。「一部のイスラエル人が、西岸地区で行われている監視の程度をテストしてみた。新型コロナウイルスの世界的大流行中に、イスラエル警察が『ペガサス』をとおして彼らの携帯電話を監視していたことは、プライバシーの侵害として大きな論争を引き起こした。
しかし、監視がヨルダン川西岸で行われる場合、問題は大きく異なる。イスラエルの諜報機関には何の規制も制限もない。彼らはやりたい放題だ」とアリマ氏は語った。
イスラエル人の安全保障専門家・アナリストであるヨニ・ベン=メナヘム氏は、アラブニュースに対し、「これらの電子的な手段のほとんどは、テロと戦い、危険で指名手配された人物を突き止め、イスラエルへの侵入を防ぐために使用されている。そのために、イスラエル軍には、監視システムの運用に特化した女性の新兵で構成されている特別部隊がある」と説明した。
ベン=メナヘム氏は、デジタルセキュリティのもう一つの形態として、イスラエル軍がガザ地区との境界線60kmに沿って建設し終えた電子壁についても言及した。イスラエルに向けてトンネルを掘ろうとする試みを検知し、地下からのイスラエルへの侵入を防ぐために、最新のシステムとセンサーが配備されたのだ。