世界と比較した日本のesports市場、その現在と未来とは? | スマホゲーム情報ならファミ通App

新団体発足で日本にesportsの風が吹き始める

2018年2月7日、スマホアプリ分析プラットフォーム「App Ape(アップ・エイプ)」を手掛けるフラー株式会社が、自社が保持するデータとユーザー投票をもとに、2017年もっとも勢いのあったアプリを決める“App  Ape Award 2017”を開催。

本イベントにてGzブレイン代表取締役社長の浜村弘一氏(以下、浜村氏)が登壇し、“拡大する世界のesports市場と日本市場における展望”というテーマの講演が行われた。

▲Gzブレイン代表取締役社長およびファミ通グループ代表の浜村弘一氏。

浜村氏は、本講演の始まりとして世界のesports市場の動きについて説明。2017年は世界全体で約15億ドル規模の市場を有したesportsだが、5年後も順調に推移し続け、約1.5倍に拡大する見込みであると展望を語り、とくにアジア(韓国や中国が中心)、米国、欧州といった地域はそれぞれ億単位の規模でesports市場を拡大し、人気・存在感が増し続けていると語った。

なお、日本のゲーム市場は世界2位のシェアを誇るが、まだesports市場については世界の5%ほどのシェアしかない。だが、新団体の発足を皮切りに今後本格稼働していき、世界各国のesports市場以上の成長率が期待できると述べた。

つぎに世界中のさまざまな賞金制大会に関する資料が表示された。この中には『Dota 2』、『League of Legends』、『Call of Duty』シリーズといったタイトルにて大規模な賞金制大会が行われており、中でも『Dota 2』の大会では、日本円にして約27億円というケタ違いの賞金が出されたことが語られた。

こういった大会は各タイトルのメーカーが主催しているものもあれば、プラットフォーム、esports興行を専門に扱う興行団体、放送局など、多種多様な主催者によって大会が執り行われているとコメント。

続いて、日本の賞金制大会についてのデータを表示。ここでは、前のデータとの比較で日本では高額賞金の大会があまり行われていない実態に触れた。

その理由の大半を占めるものは日本の法規制であり、関連する法律は大きく刑法、風営法、景表法であると説明。その内容に関する話を以下3種類のスライドとあわせて行った。

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▲大会参加者からの参加料、ゲーム購入費、課金などから賞金を捻出した場合、刑法賭博罪にあたってしまう。
▲ゲーム機を設置した主催者自身が賞品提供を行うのは風営法上NG。主催者以外の事業者が賞品提供する場合は例外となる場合もある。
▲ゲームメーカーが賞金を出す場合、景表法という点に関わってきて、ひとつのタイトルに出せる賞金の額に制限が設けられてしまう。

日本が法規制により市場形成に苦心する中、世界ではさらにesports熱が増していき、esportsの国際競技化が進みつつあることが浜村氏の口から語られた。

上記画像は今後行われていく国際大会の表。この中で2018年のアジア競技大会では実験的に導入される“公開競技”としてesportsの実施が決定している点と、2022年のアジア競技大会ではesportsが正式種目となることが決定済みと説明。

浜村氏は、この流れで行けばアジア競技大会以降もesportsが競技として実施され続けていくだろうと語った。

続けて、2024年のパリ夏季五輪でesportsを種目に? という話が浮上していることを紹介。

IOC会長のThomas Bach氏は「ゲームはミレニアル世代に人気の新スポーツ」であること、そのうえで「差別・バイオレンスが平和を維持と言う点で相性が合わない場合がある。明確な線引きが必要」であると語っている。浜村氏はこのコメントに「平和の祭典で銃撃戦などのゲームは違う」と補足を語った後、五輪で行われる可能性のあるゲームジャンルについて少しずつ世界で議論が始まっていると説明し、五輪でのesports実施に期待が高まっていると感想を述べた。

続いて、フランス政府はフランス国内限定でesports選手を守るための法律を以下のように制定した。

・esports選手の契約は最低でも1年、最長で5年の期間を基準とする ・12歳以下の選手は公式戦への出場は認められない

これらはパリ夏季五輪でのesports実施を見据えた対応ではないだろうか? と浜村氏はコメントした。

国際大会での予定が明確化しつつあるesports。ではもし、esportsが浸透した場合に日本人プレイヤーがメダルを獲得できるのか?という点について浜村氏は、格闘ゲームの世界大会で日本人プレイヤーが優勝し、上位入賞する選手も多いことを語り、こういう傾向からも国際大会でメダルを取る可能性は秘められていることを語った。

2017年9月に行われたTGS2017ではesportsのためのステージを2か所設営し、『ストリートファイターV』、『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』などの大会を実施したところ観戦者が大勢集まり、賑わいを見せていたこと。さらに、『パズドラレーダー』など日本ならではのタイトルでも大会に人が集まることなどが説明された。

また、参加者の投票で表彰される日本ゲーム大賞フューチャー部門の2017年版では対戦ゲーム『DISSIDIA FINAL FANTASY NT』、『ドラゴンボールファイターズ』、バトルロワイヤルを題材にした『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)』、協力プレイでモンスター狩猟タイムを競える『モンスターハンター:ワールド』などなど、esportsに用いられやすいタイトルが4つも受賞。さらに家庭用ゲームの祭典であるTGS2017の投票でPCゲームの『PUBG』が受賞したことにも驚いたと付け加えた。

つぎに2017年3月に発売されたNintendo Switchの話が行われた。浜村氏いわく、Nintendo Switchの発売はあえてゲームが最も売れる12月を避けて発売されたこと、それでも世界各地で品切れ状態が長期にわたり続いた結果、売上推移は任天堂で過去にもっとも売れたハードWiiに追いつく……そして追い抜こうとしていることが説明された。

この売上に一時期貢献したesportsとの相性が非常にいいタイトルがあると浜村氏は語る。そのタイトルは『スプラトゥーン2』で、本作は男性プレイヤーの比率が全体の約7割を超えており、任天堂作品としては非常に珍しいデータを残しているとのこと。しかし、このデータはesportsタイトルとしては典型例であると説明した。

また、esports熱の高まりはPCゲームの『PUBG』が貢献していると解説。リリース半年で世界販売本数1000万本を達成し、日本が世界のプレイヤー人口の25.4%を占めているなど、日本に根付いていなかったPCゲームの文化を広める上でも重要な役割を果たしている。

これまでは日本のesportsを盛り上げようとJeSPA、JeSF、e-sports促進機構という3つの団体が存在したが、これら団体がCESA、JOGAの支援を得てひとつにまとまり、新団体“JeSU(日本eスポーツ連合)”が発足された。

ここで注目視されるのはCESAとJOGAの支援という部分。このふたつの団体はプラットフォーマー、ソフトメーカーといったIPホルダー側であるため、IPホルダーの協力を得た日本の新団体は世界からも注目を集めている。

そんな新団体がまず目指していくことのひとつはJOCへの加盟。すなわちesports選手の地位向上ならびに社会的地位の確立につなげていくことが大事だと語る浜村氏。これは何故かというとesportsという文化は選手が主体であり、選手が注目されなければ衰退してしまうものだと説明した。

彼らesports選手の登場で産業の構図にも変化生まれると浜村氏。世界のesports市場規模15億ドルの内訳が円グラフで表された。

これを見ると、投資が50%、スポンサー・広告料が33%と、収益性が高く、大会スポンサーや放送権の販売、選手への協賛など、esportsもすでに野球やサッカーのような構図で形づくられ始めていると語った。

では、esports市場が形作られるなかで、どうやって選手が生まれてくるのか。氏が解説したゲームプレイヤーのヒエラルキーによれば、一般ゲームプレイヤーの中からゲーム公認プレイヤーが生まれ、それらアマチュアプレイヤーがファンイベントなどを通じてコミニティを形成しつつ、その一部が賞金制大会に出場することでプロゲーマーとなっていくという。

さらに市場が成熟し、地上波テレビでの大会中継などによりファンの裾野が広がれば、スタープレイヤーも誕生していく。すでに好きなプレイヤーを応援したいという観戦目的の人たちが存在し始めており、この動きが広がれば、これまでのゲーム業界にはなかった観戦料という新たな収益源が生まれ、ゲーム市場が大きく変化するのではという期待を述べた。

ちなみに新団体が最初の活動として2018年2月10日、11日の2日間、幕張メッセで開催される闘会議2018にて、大会参戦者に向けた初のプロライセンス発行が行われた。闘会議2018は、多くのゲーマーにとって初めてのプロゲーマーへの1歩となった。

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