カロッツェリアのサイバーナビと言えば、多くのクルマ好きに知られるパイオニアのカーナビシリーズ。パイオニアは1990年に世界初の市販GPSカーナビ「AVIC-1」を世に送り出したことを皮切りに、1997年に世界初のDVDカーナビ「AVIC-D909/AVIC-D707」を発売。2001年には業界初のミュージックサーバー機能を搭載するHDDカーナビ「AVIC-H09」を市場投入。その後も、「スマートループ」「ロードクリエイター」「ARスカウターモード」といったさまざまな革新的技術を備える製品を生み出した。カロッツェリア カーナビゲーションのフラグシップモデルであるサイバーナビは、カーナビとしても音楽再生機としても多くのファンを魅了している。
直近では2019年10月に、市販カーナビ初の通信量無制限、使い放題のインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応し、地図の自動更新やYouTube動画の再生、車内Wi-Fiスポット化といった新機軸を打ち出し大きな注目を集めたのも記憶に新しいところ。また2021年10月5日には、2021年モデルとなる「AVIC-CQ912-DC」など“912系”サイバーナビシリーズ8機種を発表。最新の地図データ搭載はもちろん、昨今のオートライト装着義務化の法規改正に伴い、明るい時間帯にヘッドライト点灯に連動して本体画面が暗くなり視認性が低下することを回避するため、クルマや状況に合わせて「時刻連動」と「イルミ連動」から選択できる「画面明るさ切換設定」が新たに追加されるなど、時代に合わせて毎年着実に進化を遂げている。
ちょうど本記事が掲載になる頃には、カー用品店などの店頭に最新の“912系”サイバーナビが店頭に並び実際に商品を見て触れて確認できるタイミング。ここ数年で“常時インターネット接続”により大きな変化を遂げ、現状ではまさに唯一無二ともいえるエンタテインメント性をもつ新世代サイバーナビの登場に至るまでには、いったいどのような開発秘話があったのだろうか。今回、歴代の愛車でサイバーナビを愛用してきた高橋敏也氏にパイオニア本社を訪ねてもらい、開発担当者との対談を通じて新世代サイバーナビの魅力に迫ってもらった。
対応いただいたのは、パイオニア モビリティプロダクトカンパニー 市販事業統括グループ 商品企画部 企画1課の山内博史氏と、パイオニア販売 マーケティング部 戦略企画課 蒲牟田洋明氏。
高橋敏也氏: ちょうど約2年前ですか、オンラインに対応した910系と言われるサイバーナビがデビューしました。登場直後のファーストインプレッションを含めてCar Watchでもレビュー記事を掲載しました。
実際に使って、こんな形でインターネットにつながるよとか、走るとどういったルートを選ぶのかといった実体験について記事で紹介しましたが、最初の発表会以来、なかなか開発の背景であったり、これまでの長いサイバーナビの歴史で大きな転換点になった910系について細かく話を聞く機会がありませんでした。
最初に910系サイバーナビでオンライン接続を導入することになった技術的背景や、開発のきっかけなどを教えていただければと思います。
山内博史氏: 910系のサイバーナビの開発でいえば、私がマーケティング部門にいたころから始まっていました。当初は製品の機能や仕様面で方向性に非常に悩んだモデルでした。
開発当時はカーエレクトロニクス業界ではクルマに通信費用を支払うということに対してまだ抵抗を持たれていた時期でした。現在のようにサブスクリプションサービスを気軽に申し込むという発想はない時代だったと思っています。
ところが、910系サイバーナビの開発中にNTTドコモさまから「車向けの新しい通信サービスを開始しますが、一緒にやりませんか」とお誘いがありました。それが「docomo in Car Connect」で、私が企画に異動する前の2017年半ばくらいから910系サイバーナビへの搭載を目指して開発検討が始まりました。
これまでもNTTドコモさまとは通信モジュールを使った通信サービスはやっていたのですが、少量パケットの渋滞情報や、オンライン検索を行なうレベルでした。これが大容量通信を使用できる「docomo in Car Connect」というサービスによって、クルマの中で通信を無制限に利用できるという全く新しい価値をお客さまに提供できるので企画としては非常に面白く魅力的に感じました。
ただし先ほど述べたように当時はクルマへの課金はビジネスモデルとして難しいと思われていたので、どのような料金設定にしたらお客さまに支持してもらえるか、発売するまでいろいろ議論を重ねました。
今でこそ「1,000円/月で無制限は安いね(※365日プラン税別12,000円を月割りに換算した場合)」と言ってもらえますが、発売前までは「クルマの中の製品に1,000円/月(※365日プラン税別12,000円を月割りに換算した場合)も出してもらえるの?」とか「税別500円(税込550円)/日だとちょっと高いよ」という話を、企画・営業部門の人たちからコメントをいただきました。また「docomo in Car Connect」のサービスだけではサイバーナビの機能として十分ではないと考えていたため、車載機が通信できることでしか実現できない新しい機能を開発しようということでいろいろと検討を始めました。
まずは「DiXiM Play」というハードディスクレコーダーの遠隔視聴技術を、別の企画担当者が見つけてきまして、「山内さん、こんなソリューションがあってカーナビで同じことができたら面白そうですよ」いう話から、デジオンさまにアポイントを取ったところスムーズに開発に向けた話がまとまり、サイバーナビの通信機能のひとつとして搭載することにしました。
山内博史氏: そして、もう1つインターネットを使った動画コンテンツの再生をやりたいと考えていました。いろいろと検討しましたが最終的に、技術から「サイバーナビでYouTubeの再生ができますよ」という提案もあり、「ストリーミングビデオ」という機能を搭載することにしました。ただし企画として開発決定したのが発売の1年ぐらい前で、発売に間に合うように開発できるか非常にギリギリのタイミングでした。
最後に通信が使えるようになったら組み込みたいと考えていたのが「自動地図更新」です。今のカーナビの課題は地図データが古くなるということなのですが、地図データを無償で更新できるにも関わらず、利用されないお客さまも多いことが課題と考えていました。3年間のバージョンアップが付属しているサイバーナビでも、更新されている方は3人に1人くらいです。お客さまにとっても有用な機能なので、どうにかして利用率を高めたいと考えたのが「自動地図更新」を開発するきっかけでした。
おかげさまで、「自動地図更新」を搭載してから利用率は従来モデルの倍くらいに上がりました。特にネットワークスティック同梱モデルを購入いただいたお客さまはほぼ100%に近い方にバージョンアップを行なっていただいています。「自動地図更新」は画面にポップアップする「自動更新しますか」というメッセージに「はい」を選ぶだけで自動的に更新されるという手軽さも、利用率を高める要因になっています。
山内博史氏: 最後にこの「910系サイバーナビ」を導入することによって、今では「docomo in Car Connect」というサービス自体が市場に受け入れられ、「1,000円/月(※365日プラン税別12,000円を月割りに換算した場合)・無制限で使えるなら安い」という声をいただくようになりました。現在ではクルマに通信環境を持ち込んだ新しいユーザーベネフィットがお客さまに評価されていると感じています。
私自身も自家用車に「910系サイバーナビ」を装着していますが、家族もよろこんで使ってくれています。私はYouTubeを見ないので、ソースとして音楽CDやTVを選んでいますが、家族が乗ったあとに運転するとYouTubeから最近の流行曲が流れてくるようになっています。後席に座る子供もオンライン対応のゲーム機やタブレットなどを持ち込んでYouTubeを見るようになり、クルマに乗った際には「早くエンジンをかけて」と催促されるシーンも出てきました。
また、初めて乗った人にも驚かれることもポイントですね。「これ凄いね、なんでYouTubeが見られるの?」「なんでこのクルマはインターネットにつながるの?」といった話題で会話が盛り上がるので、個人的に自慢しています。
蒲牟田洋明氏: 私は910系サイバーナビがデビューしたときは営業担当でしたので、サイバーナビを販売する立場でした。最初はクルマの中をオンライン環境にするというイメージを広げることにとても苦労しました。私は入社して14年~15年になりますが、ちょうど入社当時を思い出しました。当時は「スマートループという新しい価値を広めていこう」という状況でしたが、カロッツェリアのサイバーナビでは新しいものを取り入れて世の中のスタンダードにしてきた実績があり、新しい価値を広めていく大変さは共通したものでした。
実は910系サイバーナビの導入当初は型番に「-DC」が付かない“通信なしモデル”の方が販売店で好評だったのです。クルマをオンラインにするという発想が当時は無く、価値を理解してもらうために非常に苦労しました。
ただ、実際に体験してみると今度は逆に抜けれなくなるほどの魅力もあります。今はYouTubeなどのオンラインコンテンツが当たり前になっている世の中ですが、クルマでの移動中はYouTubeが見られないのは当たり前。車載製品は世間の流れから1周、2周遅く、音楽CDやDVDといった物理的なメディアの呪縛からなかなか抜けられませんでした。しかし、クルマの中をオンライン環境にすることで、自宅と同じようなインターネット環境の快適さを車内でも享受できるようになるのです。
910系サイバーナビの発売から2年が経ちましたが、今でも常時インターネット接続の魅力を体験していただけてないお客さまが非常に多いのを理解しています。わが家では子供がサッカーチームに入っているので、サッカーの練習や試合の送迎にクルマを出すこともよくあるのですが、わが家のクルマがオンライン環境になっていることが知られてからは「こんなのがあるんだ!?」「蒲牟田家の車に乗れば車内でもYouTubeが再生できる」と話題になり、合計で3台ほど送迎車が出ていても、蒲牟田家のクルマから真っ先に満席になる状況になっています。
日常的に使い慣れてしまった私たちは、910系サイバーナビの発売から2年、3年と年月が経って目新しさが減ったように感じていますが、それまで知らなかった人から「こんなものがあるなんて」という驚きや感動の声を今でもたくさんいただきます。そんな驚きや感動をさらに広めていく活動をこれからも続けていきたいと考えています。
高橋敏也氏: 蒲牟田さんが営業現場にいらっしゃったころは今から1年半前ということですが、カー用品屋さんなどの売場で、例えば当時は「YouTubeを再生できます」というような訴求の仕方は、まだ反応が鈍かったですか?
蒲牟田洋明氏: 日常的にYouTubeを見られているお客さまでも、それをクルマの中でもというイメージはまだもたれていなくて、その楽しさを伝えるのが難しい状況でした。クルマの中はオンラインコンテンツを我慢する場所というのが強かったのかなと思います。車内でエンタメを楽しむなら市販のDVDを買ったり、レコーダーでダビングしたDVDなどを持ち込んで見るという認識で、それが当たり前の世界になっていましたね。われわれに近いであろう販売店の人たちもそういった状態だったので、通信の楽しさに気付いてもらうまではなかなか遠いなという感覚があります。
高橋敏也氏: 例えばカー用品店で、お客さまに「Wi-Fiがあればオンライン対応のゲーム機がつながりますよ」とか、「子供が後席でしばらく静かにしていてくれますよ」みたいに伝えたところから、相手に「それはスマートフォンのテザリングでやればいいんじゃない?」と返されるような突っ込んだ会話はあったんですか? それとも、クルマではそういうのは我慢しようよみたいな世界だったんでしょうか。
蒲牟田洋明氏: モバイル通信では、当時は「パケットの使い放題」といったサービスがそれほど普及していなかったので、データ使い放題といっても一部の人からしか反応がなかったところもありました。
高橋敏也氏: 910系サイバーナビが発売されて、Wi-Fiを使ってクルマの中にネットワークを構想できるようになったところに、ちょっと悲しいことですがコロナ禍となり、テレワークやリモートワークといった新しいニーズが出てきました。
それから“ニューノーマル”という考え方も出てきました。私のまわりでも、例えば家族で帰省したり、家族でちょっと短い旅行をしますというときに、クルマで動きたいと思う人が増えています。家族でクルマ移動するときにWi-Fiでインターネットにつなぎ放題はもの凄いメリットになっていて、仕事でもクルマ移動するときに会議が重なってもサイバーナビ経由でWi-Fi接続できる。
スマホだと契約によってはパケットが気になるところですが、移動時には通信量無制限というサイバーナビはもの凄いメリットがあると思うんですね。そのあたり、なにかお客さまからの反応というか、リアクションなどはこれまでにあったでしょうか。
山内博史氏: そういった部分では、新型コロナウイルスが問題になって、家庭ごとにやっぱり外出は極力避けようという意識が芽生えた中でオンラインコンテンツが広まっていったと思います。家庭でのオンライン動画配信サービスも前年の何倍もの伸びを示して、同じくフードデリバリーサービスにしても、外出を避けてアプリを利用して食事を楽しむスタイルです。そういったオンラインサービスが根付いてきても、クルマはそこから少し遅れていると感じます。
そんなタイミングで弊社は「車載用Wi-Fiルーター DCT-WR100D」も発売いたしまして、そのあたりからクルマの中でもいろいろな楽しみ方ができるんじゃないかという、ざわつき感のような手応えは確かにありましたね。
蒲牟田洋明氏: キャンプ関連の市場も非常に伸びていると思いますが、それに伴ってキャンピングカーの方でお取引先さまの数が増えていて、キャンピングカーでは移動の走行中だけではなく、停車後にも利用シーンがあると思います。例えば夜に、持っているコンパクトなプロジェクターを通信につなげて、通信環境を使った映像コンテンツを映し出すといった利用方法。また、自宅のレコーダーと接続してリモート再生できるところも大きなメリットです。
サイバーナビがなくてもキャンピングカーならチューナーとアンテナを取り付けて、BSやCSの放送を視聴できると思いますが、設置スペースや余計な出費が必要になります。逆にサイバーナビで通信回線を利用できれば、自宅のレコーダーが安定した環境で受信しているBSやCSの番組をサイバーナビに届けたり、録り貯めている録画番組を見ることも可能です。そういった部分が実績として少し出ているところもあります。
高橋敏也氏: 通信に関連して、どうしても聞いてみたかったのが「スマートループ」との関係です。スマートループがルート探索や渋滞情報などに関して非常に貢献しているということは前々から聞いていますが、具体的にどういった処理が行なわれているのでしょうか。サーバーに対してデータが送られて、ルート解析だとかをサーバーとナビ本体のどちらでやっているのかなど、できれば全部聞きたいです(笑)。
山内博史氏: これはパイオニアのルート探索の考え方の根幹の話になります。パイオニアのカーナビを実際に使ったときに、ルート探索すると他社よりも少し遅く感じませんか?
高橋敏也氏: それはあんまり感じたことがないかなぁ。
山内博史氏: そう言っていただけるとうれしいのですが、過去から早くないと言われることがあります。この理由ですが、HDD初代モデルを発売した頃は、東京から福岡までのルートを1秒でルート探索できる部分がアピールされていました。しかし、2005年頃からルート探索の考え方を「ルート探索の質」を重要視するようになりました。その結果、6ルート探索を終えるまでに5~10秒程度時間が必要になりましたが案内するルートが非常に良くなりました。
それまでルート探索は「距離」を優先していましたが、「ルートの質」を重視するようになった結果、VICS情報だけでなく、過去の渋滞情報から渋滞予測することで、より早く到着するルート探索ができるようになりました。パイオニアは道路情報に時間を加味することで何分で通過できるかカーナビが考えてルート提案できるようになったことが最終的には「スマートループ渋滞情報」につながっていきます。
2006年頃からテレマティクスサービスとしてパイオニアのユーザーの走行履歴を独自のプローブ情報として集め始めました。実際に「スマートループ渋滞情報」としてユーザーに提供を開始し始めたのは翌年の2007年からでした。「スマートループ」を開始して以降パイオニアが案内するルートは「距離」よりも「時間」を優先し、非常に合理的なルートを選ぶようになりました。
増え続ける渋滞情報をカーナビの車載機上で演算させることには限界がありました。高性能なCPUを搭載しているスマホなどと比べて車載製品であるカーナビの演算能力は低いためです。
そこでサーバー上で計算しルート探索できる「スーパールート探索」を開発することになりました。カーナビでルート探索するときには、目的地と出発地の周辺と、途中の道、広域の道などを考慮してルートを引くのですが、「スーパールート探索」では「もっと実際のユーザーが選択するような合理的なルートも探せるようにしよう」といったロジックをルート探索にも持ち込んでいます。
高橋敏也氏: データベースもかなり膨大なものになっていそうですね。
山内博史氏: はい、スマートループは「全道路対応」と言ってるように、全国約70万kmの道について通過時間などの数値をきちんと蓄積するようにしていて、過去何年分ものデータを使って判断するようにしています。
高橋敏也氏: 以前、御社に対する取材のときに「なぜVICSも使うんですか? スマートループだけでいいじゃないですか」って聞いたら、担当さんが苦笑いしながら「使わなきゃいけないんです」っていう回答でした。
山内博史氏: そうですね。「スマートループ渋滞情報」の中にはVICSデータも含まれているのでVICSデータを使わないわけにはいかないですね(笑)。
現在では基本的に位置情報と目的地情報をサイバーナビからサーバーに送り、サーバー側でルートを解析することで、より質の高いルート、効率がいいルートを探索しています。「スーパールート探索」の誕生前は、「目的地を通過してから有料道路を下りる」といったルートは存在していませんでした。
例えば、通常は有料道路を走行していれば最寄りの出口で下りるようルート設定しますが、渋滞などの影響で遠まわりした方が早いと判断すればそちらを選ぶようになりました。逆に案内地点とIC(インターチェンジ)の場所や方向など位置関係も気をつけて探索できるようになったため、いままでのような無駄な有料道路を使用するようなルート探索を避けるようになるなど新しいロジックがサーバーを使うことによって、実現できるようになりました。
高橋敏也氏: サーバー側にはスマートループで蓄積されたデータ、それからVICSとの連動があって、サイバーナビの車載器側からプッシュされた段階で演算が始まり、それをサイバーナビに返して、サイバーナビが総合的に利用者に対して提示をするという理解でいいでしょうか。
山内博史氏: そうですね。サーバー側ではかなり高度なことをさせていて、お客さまの使用している地図データを判別して、その地図データにあったルートを計算して提案しています。
このようによりリッチでこだわったルート探索を実現できるようになったのがサイバーナビの2016年モデルからになります。
高橋敏也氏: これは多分意識されていると思うんですけど、人間の思考に近いですね。ある程度熟練したドライバーの考え方に近いというか、「あそこはいつも渋滞してるから、1つ先の出口で下りた方が絶対に早い」という感じの、経験とスキルといったものに基づいているというのが、非常になんというか、人間に近い。
山内博史氏: そうですね、そういう探索結果を目指して開発しています。
蒲牟田洋明氏: 実際にクルマで走ると今でも驚くことがあります。パイオニアの営業マンはみんなサイバーナビや楽ナビをクルマに付けて使っていますが、急に遠まわりになるルートを案内することもあります。こっちだと遠いのになぁと考えながらも案内に従ったら、渋滞せずに目的地に着くようなことも実際に起きるのです。それは単純に有料道路などの料金だけではなく、時間もコストとして考えるロジックになっているからだろうと思います。
高橋敏也氏: 私も何度も経験しました。別に金持ちでもなんでもないですけど「金じゃないんだ、時間だ!」ですよね。
山内博史氏: 今、コストという考え方が出ましたが、「スーパールート探索」以外でも、例えば信号機の数や右左折の数は考慮するようになっています。やはり右折する方が時間がかかったり、信号機が多いと停車時間が増えますので、そこは避けましょうといった考え方に基づくものです。結果としてパイオニアのルートが優れているのは、そういった表面的には見えない部分まで考慮して計算していることが大きな理由です。逆にレンタカーなどで他社製のカーナビを使ったときに「こんな道を行くんだ」「こういう案内をするんだ」と驚くことがよくあります。
高橋敏也氏: サイバーナビのライバルとしては、手軽なスマホのナビアプリがあると思います。よく使われているスマホのナビとサイバーナビで、サイバーナビのほうには高音質であるとか据え置き型のよさはもちろんあるとしても、道案内をするカーナビとしてのセールスポイントはどこだと考えていますか?
山内博史氏: カーナビとしてはやはり誘導方法とルートの質だと思います。情報の検索量や地図更新スピードといった部分は、正直なところではスマホの方が速いですが、最終的に目的地まで運転手を連れていくために、途中で行なうルート誘導の方法といった点がカーナビならではの長所だと考えています。
あとは自車位置精度ですね。GPSが中心になるスマホは自車位置精度を出すのが難しいので、そこが最大の違いです。パイオニアのカーナビはGPSとセンサーをうまく使って自車位置精度を高めています。
高橋敏也氏: C2(首都高速道路 中央環状線)あたりでずっとトンネル内を走っていると、スマホはズレちゃうけど、サイバーナビはちゃんと走れるなって感じています。
蒲牟田洋明氏: また、一般的なカーナビは車速パルス信号を使っているので、例えば夏タイヤから冬タイヤに交換してタイヤの外径が変わると自車位置がずれてしまうことがあるのですが、サイバーナビはジャイロセンサーが変化を検出して自動的に補正する自動検出機能を備えています。タイヤを替えてから運転すると「あ、ちょっとずれてるな」と分かるのですが、少し走るだけですぐに修正されるので、凄い機能だなと思いますね。
高橋敏也氏: 昔のサイバーナビは、タイヤ交換時の切り替えやリセット機能がありましたね。
山内博史氏: ありました。昔は冬タイヤと夏タイヤの2パターンを覚えて切り替えるような仕組みで、20年くらい前までは操作して切り替えていましたが、現在は自動的に切り換えてくれます。誤差が今までと違うとナビが認識したらタイヤを付け替えたとナビ側が自動で学習してくれるので、自分で切り換える必要はありません。
蒲牟田洋明氏: あとは、自車位置の測位もクルマでの使用に合わせた「10Hz測位」になっています。スマホは人が歩く速度に合わせてGPSなどの電波を受信すればいいという低速設計ですが、サイバーナビは自車位置の測位と画面表示を1秒間に10回行なう10Hz測位なので、高速移動中の自車位置精度にも差が出て、サイバーナビはそこでもずれません。
山内博史氏: 以前に行った実験で、GPSの受信機を外したサイバーナビを付けて走行してみたのですが、パイオニアのナビはジャイロセンサーの性能が優れているので、GPSがなくても意外にしっかりとルート案内ができていました。
蒲牟田洋明氏: 自車位置精度はどうしても下がってしまいますが、車速センサーからの情報がないときに機能する「簡易ハイブリッドシステム」も備えています。ジャイロセンサーが優秀なので学習したデータを使ってルート案内を継続してくれる機能で、これもカロッツェリアならではの部分かなと思います。
高橋敏也氏: 常時接続のオンラインと言うと、パイオニアさんでは車載用Wi-Fiルーターも売っていますが、サイバーナビのWi-Fiと車載用Wi-Fiルーターの最大の違いはどこにあるのでしょうか?
山内博史氏: まずは通信を最大限活用できる機能を搭載しているところが違います。車載用Wi-Fiルーターは、サイバーナビの「docomo in Car Connect」の評判が非常によかったため、車内Wi-Fi機能だけ切り出してもビジネスになるだろうと製品化したものです。
「docomo in Car Connect」だけ利用したいという人は車載用Wi-Fiルーターでよいのですが、サイバーナビはサイバーナビならではのエンタテインメントコンテンツやバージョンアップなどの要素を組み合わせているところが最大の魅力だと思います。
高橋敏也氏: ストリーミングビデオを見たり、自宅のレコーダーを利用できたりといったところは車載用Wi-Fiルーターを買ってもすぐにはできない魅力ですね。
山内博史氏: そうです。通信を上手く使ってカーナビの魅力を高めるやり方は、メリットとして強いですね。
蒲牟田洋明氏: 車載用Wi-Fiルーターとの違いは、やはりこのサイバーナビの画面でYouTubeなどをそのまま操作できる点が非常に大きなメリットです。
ほかの機種でもスマホからミラーリングさせた動画をナビ画面に映し出すことはできますが、例えばクルマで走り出してからBGM代わりに動画を流そうと思ったときは、助手席の人でもシートに座ったままスマホを取り出して、カーナビとケーブルで接続して、そこからやっとスマホを操作するという手順が必要です。これがサイバーナビなら、運転席にいても信号待ちで停車してるわずかな時間でナビを操作してササッと再生が始まります。
車載用Wi-Fiルーターを買ったお客さまがどのようなコンテンツを利用しているかという調査で、実はYouTubeを利用しているケースが非常に多いというアンケート結果が出ています。そのあたりでも、車載用Wi-Fiルーターが出たおかげで、直接ナビを操作してオンラインコンテンツを楽しめるサイバーナビのよさが浮き彫りになったというのが直近の流れですね。
サイバーナビであれば全部ナビの中で使えるという状態です。プレーヤーを使えて音もよくしてくれるので、トータルで言うと、やはりハードとソフト、さらにソリューションまで含めて提案できるのがサイバーナビで、そういう意味ではオンラインのフラグシップモデルですね。
高橋敏也氏: データ使用の制限がないということですけど、本当に上限はないのですか? YouTubeも見放題じゃないですか。最近はYouTubeでしか新曲をリリースしないアーティストもすごく増えていて、最新の音楽市場はすでに音楽CDではないですし。
山内博史氏: 今は月額料金が安いサービスも増えてきましたが、動画はそれなりにパケットを消費します。例えばクルマでYouTubeなどを楽しむと、1か月で20GBぐらいは簡単に使い切ってしまうでしょう。また、価格の安さに加えて安心感という面も支持されています。
サイバーナビの購入時には「docomo in Car Connect」の無償期間が1年間付属していますが、終了後の継続率も非常に高くパイオニアとしては驚いています。
冒頭でバージョンアップの話もしましたが、無償期間に使っていただいているだけではなく、有償になってからも13,200円(税込)というお金を払っても利用し続けたいと考えるお客さまがこれだけいると分かったことが、今回の最大の収穫だと思っています。
高橋敏也氏: サイバーナビを選んで使っている人は、クルマ好きであったりサイバーナビ好きということもあるんでしょうが、おそらく日ごろからカーナビを積極的に使う層なんでしょうね。それだけに、データ通信のありがたみが分かるということで、継続しようという意欲がどんどん高くなっていくという感じでしょうか。
山内博史氏: そうですね、特に「docomo in Car Connect」は買い取り型の課金システムです。多くのユーザーがサブスクのような自動継続ではないのに、継続の意思をもって課金していただいているので驚いています。
高橋敏也氏: サイバーナビはDVDの「AVIC-D909」からそうですが、DVDのドライブがあるところにコンテンツを見たい人が集まって、そのあと「AVIC-H09」になってHDDにCDの楽曲データを取り込みたい人、CDチェンジャーからの移行ということで、さまざまなコンテンツを再生することにサイバーナビはこだわってきたイメージがあります。最新のサイバーナビでは、常時インターネット接続になりオンラインコンテンツ見放題という形が提案されているのだと思いますが、メーカーとしても意識しているのでしょうか?
山内博史氏: 開発当初それほど意識したわけではありませんでしたが、開発が進むにつれて、次にできる新しいソリューションやサイバーナビとして提案できることを検討していくなかで、通信を使うことを910系サイバーナビのコンセプトに位置付けました。今はいろいろな人に使っていただいて、通信を盛り込んでクルマの中でできる新しい価値が支持されていると感じています。
HDDモデルを出したときに音楽CDのリッピングが話題になりましたが、今回は当時と並ぶぐらいユーザーにとってもメリットが高い機能になっていると考えています。
高橋敏也氏: これまでの歴史でDVDナビがHDDナビに変わって大きく進化を遂げ、さらにHDDからSSDになって速くなったところはあったと思いますが、今回のオンライン化はサイバーナビにとって大きなジャンプポイントになったということでしょうか。
山内博史氏: はい、大きな転換点になっていると思います。これまではクルマの中でできなかったことができるようになったことに加えて、各社からAmazon Fire TV Stickのような通信を使った機器が普及してきたので、発売したタイミングもよかったと思います。
高橋敏也氏: ちょっとここで話を転換させていただいて、サウンドについてお聞きしたいと思います。実は先日、Car Watchのスタッフと一緒にサイバーナビを装着したデモカーに乗らせていただきました。まずは私が日ごろ持ち歩いてるウォークマンを音源としてUSB接続しました。これにはノラ・ジョーンズのアルバムをハイレゾ音源とノーマル音源の2種類入れて、両方を比較できるようにしています。
そのデモカーはカスタムフィットのスピーカーが搭載されていましたが、サイバーナビで再生した音は、ハイレゾ音源とノーマル音源の違いが明らかに分かりました。「あ、ハイレゾだ」ってすぐに感じました。ディスプレイにハイレゾという表示が出るのもうれしいですね。
標準のオーディオシステムとは明らかに音が違う。実際に私もやってみましたが、ヘッドユニットだけをサイバーナビにポンと入れ替えて、標準装着のスピーカーセット、これが4チャンネルでもなんでもいいですが、それでも音が違うっていうのは、明らかにサイバーナビのせい……、サイバーナビのおかげということですよね。なぜ音質がいいのかという秘密をお聞きしたいです。
山内博史氏: パイオニアでは製品ごとに音質基準を設けています。910系のサイバーナビはいわゆる「サイバーナビ χシリーズ」ではないですが、ハイエンドクラスの音質を目指した開発を行ってます。
パイオニアでは製品の音質を判定する人がいて、そこで評価を行っています。また開発段階でも、音質パーツ選びや、基板レイアウトなどを非常にこだわって設計を行っていることも重要なポイントです。
山内博史氏: 音質に関しては、サイバーナビ2017年モデルでハイレゾに対応した際の仕様や「サイバーナビ χシリーズ」を開発した際のノウハウが非常に活かされています。
「サイバーナビ χシリーズ」の方が最終的な音質はよいのですが、910系サイバーナビでは、同じレギュラーモデルで比較すると格段に音質がよくなっています。
また、開発時の音質確認はほかのモデルと比べても非常に多く行っています。オーディオ系の上位モデルと同じぐらいこだわっており、企画担当者も何回も試聴を行いました。パイオニアの試聴室では試聴スピーカーに「TAD」(パイオニアのプロ向けオーディオ製品ブランド)が使われて、サイバーナビの内蔵アンプでちゃんと鳴らせるかを確認して調整をしております。
高橋敏也氏: パーツ選びといったところは、やはりずっと培ってきた経験がなければどうしようもないですよね。
山内博史氏: この部分に関しては一番ノウハウが出る部分だと思っています。パイオニアはオーディオメーカーなので、過去から蓄積してきた音のノウハウをうまく活用しています。特にカーナビ製品はオーディオ製品と違ってノイズの発生源が多いので、きれいに音がでるようにするのは大変で、音質部分の技術担当者が相当頑張って調整しています。
蒲牟田洋明氏: 私はハイエンド好きなのでずっとサイバーナビを使ってます。今回のサイバーナビは鳴らしたときの出音が違うんですよ。本当にクリアな音は、ノイズフロアが非常に低いんです。山内から説明させていただいたように、カーナビではやはりナビ基板があるので、一般的なオーディオと比べてどうしてもノイズが乗りやすいところがあります。
まずはオーディオ基板とナビ基板を2層構造に分けることでノイズを低減したり、そこでノイズ処理を行なっていたり、あとはひとつひとつのパターンですね。レイアウトでどこにコンデンサーを載せてどこにアンプのチップを載せるという工夫で、その距離感や配置によってもノイズを拾う拾わないと差が出てきます。そこはまさしくノウハウが生み出す違いで、これまでの蓄積によって今のサイバーナビが成り立っているという感じです。
高橋敏也氏: カーオーディオ部門とカーナビのオーディオを開発する部門というのは分かれているものなんですか?
山内博史氏: 今は同じです。ただしサウンドに特化した部門に技術の方がいらっしゃるので、そういった人の知見やノウハウをもとに最終的な音質を決めています。
高橋敏也氏: すっごいうるさい頑固親父みたいな人っているんですか?
山内博史氏: えぇと、頑固親父はいないですが、やっぱり熟練された担当者がいらっしゃって、知見やノウハウをいただいてます。
高橋敏也氏: なるほど。先ほどの音響テストというのは、やっぱり音響用の特別な部屋でやっているのでしょうか。
山内博史氏: そうですね、川越事業所に試聴室がございまして、そちらで行っています。
蒲牟田洋明氏: 使った瞬間に分かるという感想が先ほど出ましたが、そんなポン付けの状態でも明らかに分かる違いがあります。私が営業だったときは何が違うのか分からなかったのですが、ノイズがない透き通った音というか、余計なものがないように感じます。特にハイレゾは少しでも何かあるとそれがノイズとして耳についてしまうのですが、それもないですね。
カーオーディオ専門店さんに行くと、最初はやはりサイバーナビ χシリーズがあるので「やっぱりサイバーナビ χシリーズの方が音はいいよね」という感想だったのですが、今はお客さまも“超こだわり層”だけではなく、人によっていろいろと音楽の楽しみ方が広がっていると感じます。そういった人たちや、超こだわり層の一歩手前ぐらいという人たちには「サイバーナビの音質って素晴らしいよね」という評価をいただいて、直近ではそういった専門店さんでの販売台数も伸びてます。実際に現場の評価も上がっているのかなと感じていますし、音質の部分でも十分に最高峰のカーナビだと胸を張って言えると思っています。
高橋敏也氏: 先ほどのニューノーマルの話ではないですが、実はうちでも2年近く前からクルマ通勤に変えています。私はオフィスに行かないこともあるのですが、家内も同じ会社で働いていて毎日通っていて、現在では満員電車が怖いということからクルマ通勤にしようということで、毎朝クルマに乗っていく生活になっています。
その中で、朝に通勤で出かけていくときに、TVでニュースの音声を聞いていたり、自分の好きな音楽を流すというのがあって、そんなときにやっぱり音質ってものすごく重視されると思うんですね。
私の友人でもデッドニングにチャレンジしてみたいという話が出たりして、話を聞くとだいたい45分から1時間半というのが通勤の片道でクルマの中で過ごす時間です。そこで自分の好きな音楽を聞く、しかも朝にっていう環境は、むしろある意味ではぜいたくなので、もしかしたら電車通勤には戻れないかもしれないなんて話もあったりします。
そんな状況でサイバーナビの音質というのは、私も以前は体験していました。今は変更できない車種なので自動車メーカーの純正品ですが、1つ前に乗っていた「アクア」のGR SPORTではサイバーナビを入れて、バイアンプで繋いだセパレート型のスピーカー、サブウーファーを装着して、それから両方のドアにデッドニングを施して、ということで凄くいい音になって自己満足してたんですが、家内がまったく評価してくれないというオチが付く(笑)。まぁ、このグチを続けていると大変なことになるので……。
高橋敏也氏: さて、これからサイバーナビを買いますという人、もしくはサイバーナビをすでに使っているけど音にはそれほどこだわっていなくて、でも、そんなに言うんだったらこだわってみようかなという人に「これだけはとにかく設定してくれ」という部分について、まず1つは“アレ”があるだろうと予想はしているんですが、設定してねっていうポイントを教えていただきたいと思うのですが。
山内博史氏: どのレベルのユーザーに向けておすすめするか難しいですがポイントはいくつかあります。まずは過去からサイバーナビに搭載してきた「オートタイムアライメント&オートイコライザー」やサイバーナビの2017年モデルで新たに開発された「マスターサウンドリバイブ」、あとは誰でもメーカーが調整したオーディオ設定を再現できる別売の「車種専用エキスパートチューニングデータ」などがあります。
山内博史氏: まずはマスターサウンドリバイブですが、これは設定をONにするだけでCDや圧縮音源等の音をハイレゾ相当の音質に引き上げてくれる技術なので、これは簡単なのでぜひやってほしいです。次に「車種専用エキスパートチューニングデータ」の対象になっている車両に関しては、SDを本体に挿すだけでパイオニアが調整した音響設定が手に入るのでおすすめで確実です。
先ほどサイバーナビの音質のこだわりのパートでサウンドに特化した部門があると紹介しましたが、「車種専用エキスパートチューニングデータ」はその部門で開発しています。運転席重視や全席重視といった、通常のサイバーナビのオーディオ調整機能では設定できないパラメーターを使ってチューニングしているところもポイントです。
山内博史氏: 最後に、昔からサイバーナビに搭載している「オートタイムアライメント&オートイコライザー」も初心者の方でも簡単に設定できる機能になりますので、これもやっていただきたいです。この設定をするだけでもポン付けしたよりも確実にいい音を楽しんでいただけます。
高橋敏也氏: あとは、例えばイコライザーなども音質を自分好みに変更できる部分ですが、これは好きな人は自分でいじってみてくださいねといった感じでしょうか。
山内博史氏: はい、そこは好みで調整してください。
高橋敏也氏: 設定するポジションについては、おそらく運転席か、もしくはフロントの中間というあたりが一番多いんですよね。
山内博史氏: タイムアライメントを使うには、運転席側に設定することになると思います。
高橋敏也氏: 純正標準装備のオーディオではなかなか難しいですが、例えばサイバーナビを使ってちゃんと調整していると、音楽を聴いてボーカルとギターの位置が分かるというのはよく聞く話です。左右の位置というのはなんとなく理解できるのですが、前後までというのがなかなかで、これが分かると感動的ですよね。「ちゃんと分かるぞ」って。ただ、「音源にもよるけどね」というのもよく言われることなんですが。
蒲牟田洋明氏: 今、そういう意味できちんと音楽が聴ける環境は意外とないですよね。自宅でスピーカーを置いて満足できるような音量を出せるかというと、一軒家の人ならできるかもしれませんが、集合住宅に住んでいる人も多いと思いますし、なかなかできない部分です。最近で多いのはイヤホンで聴くことでしょうけど、それだと音場はすごく狭いので、私も聴きますが奥行きがよく分からない。
そう考えるとクルマの中は、きちんと設定を煮詰めていけば、奥行きだったり、どこで何が鳴っているのかというあたりも楽しめます。今はそれができる場はクルマしかないというのは少し言い過ぎですが、そんな意味でもカーナビのサウンド設定は大事な要素だと思います。
高橋敏也氏: 1人でドライブするときに、それこそ高速道路だったら周囲の迷惑にもならないでしょうから、自分だけの空間で音が割れない程度までできる限り音量を上げて好きな音楽を流すというのは、多分音楽とドライブを楽しむという両面で非常に有効だと感じます。しかも夜道なら、スピードには気をつけてくださいですが(笑)。
ちなみにマスターサウンドリバイブですが、サイバーナビがオンライン接続になって、いわゆるYouTubeの音楽なども楽しめるようになっていますが、YouTubeの音も音質改善されるのでしょうか。
山内博史氏: TVとFM/AM、MultiRecorder、交通情報以外のソースに効果があります。
高橋敏也氏: では、YouTubeに上がっているライブ映像もいい音で楽しめるようになる、iPhoneをつないでもちゃんと音質改善されて、Apple Musicも聞けるという理解でいいんですよね?
そうなると、Amazon MusicやSpotifyもそうですし、Amazon Fire TV Stick、Huluなども使えて、そこらへんのところをネット使い放題で聴き放題なわけですから、音楽好きにとっては非常にいいですね。あと、最近の子供たちは本当にYouTube世代なので。
蒲牟田洋明氏: 私は子供が3人いますが、確かにYouTubeをずっと見ていますね。あんなにいつまでも見ていられるほど何が楽しいんだろうなと考えてしまうほどです。
高橋敏也氏: 知り合いの子供はずっと「マインクラフト」の解説動画を見ています。それが例えば、実家まで帰省する間の3時間とか、渋滞したから4時間とかっていう状況でも、トイレは気をつけてねっていう話ではありますが、車内でインターネットが使えてたら、子供に「自分のタブレット持っていってもいいよ」「オンライン対応のゲーム機を持っていってもいいよ」って言って、あと「リアのディスプレイでYouTube見てていいよ」って言ったら、もうこれで子供対策は万全ですからね。
山内博史氏: 私は実家が遠方なので、帰省では自宅を出発してから10時間ほどかかりますが、Amazon Fire TV Stickを使ってずっとアニメを流しているので長時間のドライブもまったく苦になりません。運転している自分自身は画面を見ていないですが、音を聞き流していると楽しいですし、家族が暇を持て余さないのは非常にいいですね。10時間はドラマやアニメのワンシーズンくらいなので、去年はまだ見ていなかったアニメを流しながらの道中を楽しみました。
高橋敏也氏: しかもそのときに音がいい、迫力があるっていう世界になったら、ある意味でサイバーナビを使うことで車内をアミューズメント空間にできます。さらにカーナビとしてルート案内のクオリティが高いんですよね。
最初に戻りますが、サイバーナビ独自のルート探索があって、ほぼ9割以上の人に「このルートいいね」と思わせるものだということを鑑みると、やっぱりサイバーナビを1度使うと戻れないということになっていると思います。こういったデータはあまりチェックされていないと思いますが、リピーター率っていうデータはないですよね?
山内博史氏: データはないですが、リピーター率は高いと考えています。
高橋敏也氏: そうですよね、サイバーナビを使っている人が次にどのカーナビを買うかといったら、おそらくサイバーナビですよね。私も実際に2台、3台?続いたかな?
蒲牟田洋明氏: ありがたいことに、サイバーナビのユーザーさまは「私は○○」という感じで自分が使ってる製品の型番を覚えていて、お客さまから「私はこの型番のサイバーナビを使っているんだよね」と言われることが良くあります。そのようなところからも、サイバーナビに愛着を持って使っていただいているユーザーさまが多いと感じています。
買い替え時のリピート率というデータは取っていないですが、リピート率が高いだろうと感じるエピソードもあります。サイバーナビを使っている方に新しいサイバーナビを薦めると、「わかってるわかってる、じゃあサイバーでいいよ。どこが変わったの?」と新しくなった部分を質問されて説明すると、それなら次もサイバーナビで決めようと言っていただくケースがあって、実際に使っているユーザーさまの満足感が高いのだろうと思っています。
先ほど少しナビゲーションの話もありましたが、ナビ性能が低く目的地にスムーズに到着できるか不安になると、せっかく充実させたオンラインエンタテインメントや音楽が楽しめなくなります。サイバーナビは高いナビ性能により安心して目的地に到着できるからこそ、車内でも心からエンタテインメントを楽しんでいただける商品だと思っています。
高橋敏也氏: 基礎がしっかりしてるから、それに上乗せする形でエンタテイメントが楽しいよという訴求ができる。
蒲牟田洋明氏: 道が分からないのは不安ですからね。
高橋敏也氏: おそらく、サイバーナビを知っている、使ったことがある人に対してのセールスというのはそれほど難しくなくて「またよくなりましたよ、進化しましたよ」っていう形だったり、あとは「Wi-Fiが使い放題になりますよ」と新しいソリューションを紹介するだけでいいと思いますが、これまでサイバーナビを使ったことありませんという人がカーナビをどうしようかと悩んでいる段階で、純正品にしようかそれとも社外品にしようか迷っている人たちにサイバーナビを売り込むポイントですが、基本的にはルート探索の精度の高さ、もう1つは音質のよさで、あとは何でしょうか?
蒲牟田洋明氏: 初めてのかたには、やはりオンライン機能ですね。話題になりやすいというか、「クルマでYouTubeが見られますよ」とか「クルマがWi-Fiスポットになりますよ」というのが、サイバーナビをまったく知らない人に興味を持っていただくには非常に有効だと思います。ただ、基本部分のナビ性能だったり、音質のよさもあるよという説明はもちろん必要です。そして実際に使っていただくと、オンラインはもちろん楽しかったねとなりますが、体験しないと分からないナビ性能や音質のよさにも気付いていただけるというパターンが多いですね。
ただ、既存のユーザーさまに同じようなアプローチをすると、思いのほかさまざまな反応をいただきます。これまでわれわれの側からずっとナビ性能や音質を訴求してきたのに、まったく異なるオンラインという分野の説明をすると、アレルギー反応ではないですが「いやいや、俺にとってはサイバーナビのナビ性能と音質が大事なんだ!」と口にされる人もいらっしゃいます。
実はそこを考えてWebサイトも別に作っているのです。サイバーナビの進化ポイントとして、ベースとなる基本性能はちゃんと進化しています。操作性や画面がよくなって音質も上がっていますよと。カーナビとしてもちろん進化していることと同時に、オンラインなどの新しい切り口があるのです。その意味では、新規と既存のお客さまの切り分けですね。別のアプローチが必要かなと思っています。
高橋敏也氏: 最後の最後でなぜ私がこんなことを言い出したのかというと、私もそのアレルギー反応側の1人だということです(笑)。Wi-Fiは確かに分かりやすいですし、便利だというのも分かるんですが、「いや、サイバーナビのポイントはそこじゃないでしょ?」みたいな意識が既存ユーザーにはありますよね。
蒲牟田洋明氏: そうですね。実際に既存ユーザーさまから、基本を大事にしてないんじゃないかといった声もいただいています。実際は、もちろん基本性能については従来と変わらずに重視しており、むしろナビ性能や音質がしっかりしていないと、オンラインのエンタテインメントが安心・快適に楽しめないと考えています。
これからもサイバーナビは基本性能をしっかりと押さえながら、その時々のユーザーニーズにあったカーライフの提案を続けていきたいと思います。
サイバーナビの取材はいつも楽しい。私がサイバーナビ好きであるし、開発者の皆さんから聴ける話はいつも新鮮だからだ。クルマは走ってナンボの代物な訳だが、そこにエンタメが加わればさらに楽しくなるのは自然の流れ。ならば走るのに役立ち、車内のエンタメでセンターをはれるサイバーナビを搭載するというのは圧倒的正解だと確信している。迷ったらサイバーナビ、間違いない。