IGNではSteam Deckの実機を2日間にわたって試遊し、このポータブルゲーミングPCの開発の経緯や性能、そしてプラットフォームとしての未来についてValveにインタビューを行った。読者が訊きたいであろうSteam Deckに関するたくさんの質問を尋ねてきたので、以下のインタビューをぜひご覧いただきたい。
――まず、Steam Deckの中身はどんなものですか? CPUやGPUについてはどのようなパーツで構成されているのですか?
ピエール=ルー・グリフィス氏(以下、グリフィス):AMDの4コア8スレッドCPUのZen 2と、8CUのRDNA2 GPUを搭載しています。これらはすべて最新のアーキテクチャです。
――RAM(メモリー)の容量は?
グリフィス:16ギガバイトです。
――ストレージ面ではどうでしょうか?
ローレンス・ヤン氏(以下、ヤン):64GB、256GB、512GBの3種類のモデルを予定しています。
――ストレージのアップグレードは可能ですか?
ヤン:内蔵ストレージは換装できません。しかし、すべてのモデルにmicroSDカードスロットが付いていますので、お好きな容量のmicroSDカードを挿してご使用いただけます。いつでも自由に、です。
――価格は?
グリフィス:64GBモデルが399ドル(約4万4000円)、256GBモデルが529ドル(約5万8000円)、512GBモデルが649ドル(約7万1000円)です。
――ストレージの速度についてはどうでしょうか? 256GBモデルと512GBモデルはNVMe SSDとのことですが、容量の大きいモデルほど速くなるのでしょうか?
グリフィス:はい。容量の大きいモデルほど、読み込みも書き込みもより高速になります。
――次は、ディスプレイのサイズと解像度について伺います。どのような性能なのでしょうか?
グレッグ・クーマー氏(以下、クーマー):7インチのディスプレイで、ネイティブ解像度は720pです。
グリフィス:アスペクト比は16:10です。ですから、正確な解像度は1280 x 800となります。(編注:512GBモデルのディスプレイには、プレミアムアンチグレアエッチング処理も施されている)
――バッテリーの持ちはどうでしょうか? 携帯型のデバイスにとっては重要な点ですが、Deckのバッテリー持ちはどうですか?
グリフィス:この点については、利用方法の違いによって大きな差が出るので一概にお答えするのは難しいですね。Deckで何をするのかによって、およそ2~8時間のあいだで変わってきます。『Portal 2』であれば4時間はプレイできます。30FPSに限定させた場合は、5~6時間プレイできます。
――パッケージには何が含まれていますか?
ヤン:Deck本体、電源アダプター、キャリングケースが含まれます。
――マルチプレイのボイスチャット用にマイクは内蔵されていますか?
グリフィス:もちろん。
――モバイルデータ通信は使えますか? Wi-Fi環境のない場所でもゲームをダウンロードできるのでしょうか、それともWi-Fi限定ですか?
グリフィス:Wi-Fi限定です。
――周囲の状況に応じて画面の明るさを自動調整できる環境光センサーは搭載されていますか?
ヤン:もちろん。
――搭載OSは?
グリフィス:SteamOSの新バージョンです。
――ゲーム専用のマシンなのでしょうか? それともほかのPCソフトも使え、ゲーム以外にも利用できるのでしょうか?
グリフィス:PCで使えるものならほとんどなんでも使えます。
――大画面に出力できるドックか何かはありますか?
クーマー:あります。別売りの公式ドックを用意しています。
――公式ドックの価格は未定ですか?
クーマー:現段階ではドックの価格は発表できません。
――わかりました。本体の発売時点でドックも購入可能となりますか?
クーマー:その点もまだ回答できません。
グリフィス:公式ドックが提供する素晴らしい体験は得られないでしょうが、似た機能を持った既製品はすでにたくさん出回っています。
ヤン:USB Type-Cに対応している製品はDeckでも使えます。USB、イーサネット、HDMIなど、ドックに期待するような機能はなんでも使えます。(編注:この記事が掲載されて以降、ドックを使って出力した場合の解像度についていくつか質問を受けた。720pに限定されてはいないものの、解像度を上げればパフォーマンスは犠牲になる)
――周辺機器、ヘッドセット、コントローラーなどはどんなものが使えるのでしょうか?
クーマー:USBやBluetoothで接続できるものはなんでも大丈夫です。DeckはUSB Type-Cのポートを備えています。
――いいですね。じつは私もAppleのAirPodsを試してみたのですが、まったく問題なく機能していました。Bluetoothのオーディオ機器を使うために何かを追加で購入する必要はないのですね。
グリフィス:その通りです。
――VRのプレイも可能ですか?
グリフィス:先ほども述べましたが、接続できる機器を限定したりはしていません。しかし、DeckでVR環境を実現しようと思うと手間がかかりますし、DeckのパフォーマンスはVRに最適化されていません。
――つまり、やってみることはできるけれど、人それぞれだよということですね。
グリフィス:そうですね。
――グラフィック設定は変更可能ですか? それともマシンパワーに基づいた特定の設定に固定されていたりするのでしょうか?
グリフィス:PCゲームの通常のオプションはすべて選択可能です。とはいえ、ほとんどのゲームは最初からバランスの良いグラフィック設定になっているので、そのままでも十分でしょう。
――内蔵ストレージの換装はできないとのことでしたが、それ以外のハードウェアについてはアップグレードする方法がありますか?
グリフィス:ありません。筐体のサイズの問題です。すべてのパーツを極めてコンパクトに収めていますから。
――Epic Gamesストアのアカウントにログインすることもできますか?
クーマー:先ほど述べた通り、(Linuxベースの)PCができることならなんでもできます。おっしゃったようなこともできますよ。
――MODは使えますか?
クーマー:PCでできるのでできますよ。そうしたことすべてが可能なデバイスとして設計していますから。
グリフィス:Deckに入っているSteamはPCと同じバージョンで、UIと操作方法が異なるだけです。ですから、SteamワークショップなどのMODサポートはすべて利用可能です。
――マルチプレイについてはどうですか? Deckではどのようにマルチプレイができるのですか? ローカルマルチプレイなのでしょうか、それ以外も可能なのでしょうか?
ヤン:ええ、ほかのPCと同じことです。マルチプレイゲームに接続して遊ぶことができますし、複数のコントローラーでローカルマルチプレイをすることもできます。(普通のPCに)期待するようなことはなんでも可能です。
――画面分割マルチプレイ(1画面マルチプレイ)をするのに必要なのはBluetooth接続の2台目のコントローラーだけということですね。
グリフィス:スマートフォンにSteamのリモートプレイアプリを入れて使ってもいいですよ。
――背面にあるボタンはなんですか?
グリフィス:ユーザーが設定可能なボタンが背面に(4つ)用意されています。
――供給面はどうでしょうか? 世界的な半導体の供給不足は深刻です。需要に見合った供給を今秋には実現できるとお考えですか?
クーマー:この発表のあとすぐに予約システムを展開する予定です。しかし、今後1~2年で市場が求める数量のデバイスを一度に作るのはもちろん無理でしょう。
クーマー:Deckが製造され発売されれば、皆さんが予約して順番に購入可能になります。
――Deckは何年くらい現役でいられると考えるのが妥当でしょうか? 長期的な製品戦略は? 数年後にはアップグレード版だとか2.0版のようなものが出るのでしょうか? Deckと同じSteamOSを搭載した独自のマシンをほかのメーカーに作ってほしいと考えていますか? Deckをプラットフォームだとみなしていますか?
クーマー:我々はDeckをPCにおける新たなカテゴリの製品だと考えています。顧客の皆さんにもこれが良いアイディアだと思ってもらえること、そしてこのカテゴリに私たちが製品群を出し続けるだけではなくほかのメーカーも参入したいと思ってくれることを期待しています。
グリフィス:DeckのテクノロジーやOSなど、私たちが何年もかけて取り組んできたすべての構成要素――つまり、Steam Deckそのものと言っていいでしょう――は同様のデバイスを作りたいと考えている人に無料で提供されます。
ヤン:Deckのような製品を作りたいと考えているメーカーは、SteamOS 3.0を無料かつライセンスフリーで利用できる、という点を皆さんに広く知っていただきたいです。