クラウドサービスのXbox Cloud Gamingが国内で開始されるなど、Xbox Series X|Sの周辺が賑やかだ。リリースされたばかりのWindows 11ではゲーム機能を大幅に強化するなど、Windowsとのさらなる連携も期待される。マイクロソフトがゲーミングビジネスで見据えるものとはいったい?今後のXboxプラットフォームの展望について、マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント Xboxゲームクリエイターエクスペリエンス統括のサラ・ボンド氏にメールインタビューを行った。
広告Sarah Bond氏(サラ・ボンド)
マイクロソフトコーポレートバイスプレジデントXboxゲームクリエイターエクスペリエンス統括
――サラさん、本日はよろしくお願いいたします! 最初に、少し気になったので質問をさせてください。サラさんの“ゲームクリエイターエクスペリエンス&エコシステム”(英語での立場)というお立場がものすごく興味深く。具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?
サラこちらこそ、本日はよろしくお願いいたします。これまで5年ほどゲーム業界で仕事をしてまいりましたが、数々の大好きなゲームを生み出してきた日本を代表するゲームメディアとのインタビューにとてもワクワクしています。日本のゲーマーの皆さん、そして何よりゲーム開発コミュニティーに向けて声を届けてもらえることに大変感謝しています。
まずはそうですね、私のXboxでの役割ですが、昨年(2020年)の夏に創立されたばかりで、あらゆるゲーム開発者たちに、各々の夢や希望を叶えられる環境を整備することに注力しているゲーミングエコシステムという組織を統括しています。具体的には、AAAスタジオやインディーゲーム開発者とはもちろんのこと、サードパーティーと開発者との協力体制の構築を推進しているのが当組織となりますね。開発者の皆さんとの橋渡し、ビジネスマネジメント業務のほかにも、専門のエンジニアリングチームを併設することでそれぞれのゲームクリエイターたちがゲームタイトルを構想、開発、ローンチ、そして管理する際の各ステップにおいても綿密な連携を実施しています。
ゲーム開発者たちがすばらしいタイトルの開発を行い、プレイヤーの皆さんにお届けするには相応の適した環境が整っていなければならない、と私たちは考えており、そうした環境の実現のために開発者の皆さんがどういったものを求めているのかに耳を傾けたり、時にはクラウドゲーミングの革新によって生み出されたAzure PlayFabなどの新しいイノベーションを細やかに案内したりすることでゲームタイトルの開発をより簡単に、そしてよりスピーディーに行えるお手伝いをしています。
――せっかくの機会なので、サラさんがとくにお好きなゲームとその理由をお教えください。
サラ“初めて遊んだゲーム”として記憶に焼き付いているのは『King’s Quest II』というタイトルでしょうか。いつも父といっしょに遊んでいた、思い出深い作品になります。それとは別に、これまで遊んだタイトルの中でいちばん楽しんだ記憶が多いのはニンテンドウ64向けに1997年に発売された『ゴールデンアイ 007』ですね。大学生時代に、講義を乗り越えてようやく漕ぎつけた金曜日の夕方に、当時の友人たちといっしょにワイワイ騒ぎながら遊ぶタイトルとしては最高峰でした(笑)。最近のタイトルだと少し贔屓気味になってしまうのですが、『Minecraft』が楽しいです。今年で発売から10年目を迎える本作ですが、あらゆる年齢のプレイヤーたちがともに楽しんでいる姿はもちろんのこと、Mojangのすばらしいチーム、さらにはクリエイターコミュニティーによってつねに進化を続ける姿には大いに好奇心を刺激されます。
――Windows 11では、さらにゲーミングに注力することが明らかにされましたが、端的に言ってゲーミングに注力する理由をお教えください。
サラそうですね、マイクロソフトはゲーミングに全力投球する構えを取っています。それがなぜなのかと言いますと、Xbox単体で掲げているミッションがマイクロソフトの企業としての全体的なミッションに合致しているからなんです。プレイヤーの皆さん、さらにはクリエイターの皆さんに優れた環境をお届けすることで、ゲーミングによって生み出されるコミュニティーでのつながりや喜びをあらゆる人々に体験していただきたいのです。
また、付け足すとしたら、ゲーミングはWindowsの非常に重要な骨子として存在し続けてきました。私たちが生み出すWindowsは誰しもが楽しみ、つながり、そして創造できる、魔法のような体験が待つ場所としての側面を持っています。これまでのWindowsもさまざまな人たちの協力、そしてクリエイティブな想いによって数々のイノベーションを実現してきましたが、Windows 11も連綿と続くイノベーションの伝統を余すことなく受け継ぐ、ゲーマーやゲーム開発者にとって最良のOSとして生み出されました。
――Windows 11では、Auto HDRが採用され、高速なロード時間が実現されるとのことですが、Windows 11のゲーミングへのアプローチが、この業界にもたらすメリットをお教えください。ちなみに、Windows 11で目指しているものは、Xbox Series X|Sに比肩するゲームプラットフォームでしょうか?
サラ今回、コンソールであるXbox Series X|Sで採用された革新的なテクノロジがPCでも体験いただけるようになるということは、ゲーマーやゲーム開発者の皆さんにとって非常に有益だと考えております。Windows 11はゲーマーにとって数年ぶりの、それも盛大なOSアップデートと言えるでしょう。また、私たちはコンソール、PC、クラウドといったすべてのプラットフォームにおいて優れた体験をお届けできるようになる、ということが世界中のクリエイターやパブリッシャーの皆さんにとって、非常に大きな機会につながると考えています。
――Xbox Series X|SおよびWindows 11でのゲーミング戦略においては、Xbox Game Passが欠かせないかと思いますが、Xbox Game Passの普及状況はどのような感じでしょうか。また、サラさんは、どの点がXbox Game Passのいちばんの魅力だと分析していますか?
サラ4月に日本国内に向けて展開を開始したコンソール向け、そしてPC向けのXbox Game Passですが、Xboxデバイス上でプレイ、もしくはXboxタイトルやサービスを楽しんでいるプレイヤーの規模はこれまでと比較しても史上最大だと私たちは分析しています。少し視点を引いて、全世界での状況の話をするのであれば、Xbox Game Passには1800万人を超えるメンバーが今年の1月の時点で登録していました。個人的には、この躍進はXbox Game Passが良質で多様なゲーム体験をメンバーの皆さんにお届けできているからだと考えています。一例として日本のメンバーの皆さんの場合、Xbox Game Passに登録する前と後ではインディーゲームタイトルをお楽しみいただいている方の数字が85%ほど伸びているんです。
現代におけるコンテンツの楽しみかたは、楽しみたいものを自由に選べてこそだと思いますし、そういった力を与えてくれるサブスクリプションサービスはエンターテインメント業界を席捲しています。Xbox Game Pass Ultimateのメンバーになれば、それぞれコンソール、PC、そしてモバイル端末向けに提供されていて、定期的な入れ替えが行われる100作以上の高品質なタイトルのライブラリから自由にゲームをお楽しみいただけます。すばらしいゲームの数々をお楽しみいただけるのはもちろんですが、ライブラリはプレイヤーにとってのつぎのお気に入りを見つけられるよう、特別にキュレーションされているのです。
――Xbox Game Passがゲームクリエイターにもたらしたものは、端的に言ってどのようなものでしょうか?おそらくサラさんは多くのクリエイターからXbox Game Passに対するフィードバックを得ていると思いますが、とくに印象的なものは?
サラ開発者の皆さんからは、Xbox Game Passが提供している高度なキュレーションとディスカバリー要素を非常に重宝していると聞き及んでいます。こうしたコメントを裏付けるかのように、Xbox Game Passメンバーの皆さんはこれまで遊んだことのないジャンルやタイトルに挑戦する確率が非常に高いですね。これはXbox Game Passがさまざまなタイトルをひとつのパッケージとして提供しているからでしょう。
――もしかして、サラさんの領域ではないのかもしれないのですが、今後のXbox Game Passの戦略をお教えください。このサービスをさらに魅力的なものとするために、どのようなことを考えていますか?
サラいろいろお伝えできればよいのですが、現時点では将来的なプランなどもすべてトップシークレットとなっています。ご容赦ください。
――10月1日よりXboxのクラウドゲーミングサービスであるXbox Cloud Gamingが正式に開始されましたが、同サービスはXbox Series X|S、引いてはゲームユーザーに何をもたらしてくれますか?
サラ私たちはXboxをコンソール、PC、さらにはモバイル端末、タブレット端末、ノートパソコンなどのブラウザからといったさまざまなデバイス上で楽しんでいただける体験として皆さんに送り出そうとしています。そうした体験の実現のためには、Xboxの門戸を可能な限り広げ、さらには誰もが楽しめるコンテンツを用意する必要があります。私たちはこれからも、PC上で友人たちとゲームタイトルをプレイするときも、タブレットのブラウザを経由したクラウドゲーミングでAAAタイトルをプレイするときも、Xboxでの優れた体験をお届けできるよう、取り組んでまいります。
――ID@Xboxプログラムについてもお話いただけるとのことですが、ID@Xboxの成果をお教えいただけないでしょうか。また、ID@Azureも開始されるようですが、どのような内容になりますでしょうか。
サラよくぞ聞いてくださいました!コンソール、そしてPC向けのプログラムが発足した2014年から、ゲーム開発者の皆さんはID@Xboxを通して2000タイトル以上を発売しており、合計で20億ドル以上の収益をあげています。日本国内に目を向けると、私たちは200以上ものインディーゲーム開発者との協力体制を敷いており、これらが結実することでより多くのすばらしいゲームタイトルがXboxプラットフォームからプレイヤーの皆さんにお届けできることを期待しています。ID@Xboxプログラムは多様なゲームタイトル、そして体験を送り出すことを大切にしているため、今後日本のインディータイトルが多く収録されることはプログラムにとって非常に重要なマイルストーンとなるものとして考えています。
――XboxおよびWindows 11は、ゲームユーザーにどのようなゲーミング環境(エコシステム)をもたらしてくれますか?
サラゲーミングは新時代に突入しつつあると私は感じています。その証拠が数々のすばらしいゲームタイトルを収録したPC向けのXbox Game Passであり、私たちはこれからも開発者の皆さんと連携しながら優れたゲームタイトルをこのサブスクリプションサービスに追加していきます。PC向けのXbox Game Passのライブラリには今後発売予定の『Halo Infinite』、『Back 4 Blood』、『Age of Empires IV』、さらにはXbox Game Studiosやベセスダ・ソフトワークスからの最新タイトルが発売に合わせて収録される予定です。
――最後に、日本のファミ通読者とゲーマーに向けてメッセージをお願いします!
サラ日本のクリエイターの皆さん、そしてこれまで日本から世界中に送り届けられてきたゲームタイトルの数々はゲーム業界にとってなくてはならないものです。ゲーム業界で働くうえで、レジェンドと呼ぶにふさわしいクリエイターの皆さんとパートナーシップを結べることは仕事を非常にやりがいのあるものにしてくれます。今回、ID@Xboxプログラムを通してより多くの日本のゲームタイトルを世界中に届けられることはこの上なく幸せなことだと感じています!ぜひ楽しみにしていてくださいね。