さる2021年10月29日、「iPhone 13」シリーズをはじめとしたアップルのiPhoneの15機種が、総務省が定める電気通信機器の基準認証制度における、技術基準への不適合等が確認された端末機器の一覧に追加されたことが話題となりました。
日本で無線通信をする機器を提供する場合、基本的に電気通信事業法等が定める技術基準に適合していることを証明する、いわゆる「技適マーク」を取得する必要があります。もちろん日本で販売されているiPhoneは、いずれもこの技適マークを取得して販売されています。
ではなぜ多くの人が普通に使っているiPhoneの、これほど大量のモデルが技適不適合等の対象リストに載ったのかといいますと、特定のケースで問題が発生することが確認されたからです。その問題とは、デュアルSIMで運用すると緊急通報ができないケースがあることです。
今回リストに掲載されたのはいずれも物理SIMとeSIMを搭載しており、eSIMが使えるサービスを活用すればデュアルSIMでの運用が可能なモデルです。その両方に音声通話対応のSIMを入れていれば問題は起きないのですが、一方が音声通話対応SIMで、もう一方がデータ通信専用のSIMという組み合わせで、なおかつデータ通信専用のSIMを「モバイルデータ通信用」に設定していると、110番や119番など緊急帰還への発信ができなくなるというのです。
とはいえ、データ通信専用のSIMを音声通話用に設定しても使い物にはなりません。それゆえ一連の問題によって、対象のiPhoneでは音声SIM+データSIMでデュアルSIM運用すると、設定を変えない限り緊急通報ができず、危険な状態になりかねないことから問題視されたわけです。
実はこの問題は、iPhone 13シリーズが発表される直前の2021年9月10日に携帯4社、そしてMVNOで個人向けにeSIMを使ったサービスを提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)が既に発表しているもの。2021年9月24日にはiPhone 13シリーズ4機種も共通の問題が確認され、15機種でこの問題が起きることは既に明らかにされていました。
ではこのリストに掲載がされたからと言って、eSIMを搭載したiPhoneを日本で使ってはいけないのかというと、そういう訳ではないようです。一連の問題でiPhoneの電波に関する機器に問題が生じていたり、技適マークの内容が間違っていたりした訳ではなく、現在はあくまで使い方によって問題が起きることが指摘されている状態。総務省の今回の対応は、ユーザーに「問題が起きる使い方をしないで下さいね」と周知するために実施されたものと見られます。
実際技適不適合等のリストを見ますと、以前にもソフトバンクが販売したいくつかのAndroidスマートフォンや携帯電話で、長い間再起動せずに利用すると緊急通報に接続できないという不具合が起きるケースがあったようです。ですがそれらはソフトウェアの修正で解消がなされいるようで、現在のリストには各社のソフトウェア更新に関するWebサイトへのリンクが案内されているのみとなっています。
今回のiPhoneの問題が同様の方法で解消されるのかは今の所分かりませんが、シングルSIMで運用する分には問題が発生しないなど回避策は存在しているので、使い方に気を付けさえすればユーザーが手元のiPhoneを使い続けられることは確かでしょう。2019年に特定の周波数が使えないなど、ハード的な問題により技適不適合となったエイスーステック・コンピューターの「ZenFone Max Pro(M2)」のように、実質的な端末回収にまで至ることはないと考えられます。
とはいうものの、デュアルSIMの仕組みを生かして一方のSIMを安価なデータSIMにし、そちらでデータ通信をまかなうことで料金を抑えるという節約術は、とりわけスマートフォンに詳しい人達から人気を集めていたものでもありました。それだけに一連の問題によって、国内で最も人気が高いiPhoneでその手法が利用できなくなったことを嘆いている人も少なからずいることでしょう。
ですがある意味、この問題で最も嘆いているのはIIJかもしれません。なぜならIIJはここ最近、自身でSIMを発行できるフルMVNOという立場を生かしてeSIM向けサービスを強化しており、eSIMのデュアルSIM運用で節約できることをアピール、契約拡大に繋げようとしていたからです。
特に最新の料金プラン「ギガプラン」では、eSIMであれば月額440円で3GBの通信量が利用できるなど攻めの姿勢を見せており、それが月額0円で利用できる楽天モバイルのSIMとのデュアルSIM運用によって激安でスマートフォンを利用できるとして、スマートフォンの先進層から注目されるなど新たなトレンドを作り出しつつありました。
もちろんグーグルの「Pixel」シリーズなど、eSIMを搭載したAndroidスマートフォンであればiPhoneのような問題は発生しないので、IIJのデータ専用eSIMサービスを活用した節約術自体は現在も有効です。ですが日本でiPhoneは利用者の母数が多いだけに、そのiPhoneをターゲットにできなくなったことが、利用者の裾野を広げる上で痛手となったことは間違いないでしょう。
では、この問題が解消される日がいつ来るのか? といいますと、それはアップル次第になるかと思います。一連の問題が公にされてから2カ月弱程度とまだ日が浅く、iPhone 13シリーズが対象となったのも、タイミング的にアップル側が問題を把握して対応するまでの時間がなかったためと考えられます。
iPhoneユーザーの側からすれば早急な対応を求めたい所ですが、ソフトウェア更新で修正がなされるにしてもまだしばらく時間がかかると予想されます。eSIMをフル活用したいiPhoneユーザーは、当面我慢が強いられることとなりそうです。
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