ケンコー・トキナーのミラーレンズ「SZ 500mm F8 Reflex MF」
「ミラーレンズ」や「レフレックスレンズ」とも呼ばれる反射望遠レンズをご存じですか?一般的な屈折光学を採用する望遠レンズに比べて驚くほどコンパクトで、比較的リーズナブルな価格が特徴となっています。1970年代から1980年代にかけて特に人気を集め、当時ほとんどのカメラメーカーやレンズメーカーからリリースされていました。長年、写真撮影を趣味にしている写真愛好家のなかには、このレンズで撮影した経験のある人も少なくないことでしょう。【画像】過去に登場した各社の反射望遠レンズと比べてみると、今回登場した「SZ 500mm F8 Reflex MF」はいまどきのデザインに仕上げられているのも魅力ケンコー・トキナーが2月末に販売を開始した「SZ 500mm F8 Reflex MF」は、その時代を彷彿させるマニュアルフォーカスの反射望遠レンズとなります。デジタルカメラ普及後の同ブランドの反射望遠レンズとしては、「Reflex 300mm F6.3 MF MACRO」(マイクロフォーサーズ用/生産終了)に続くもので、反射望遠レンズならではの小型軽量ボディを継承しつつ、デジタル時代に合わせた描写性能の改善が図られています。500mmの超望遠レンズとは思えない小ささ&軽さ本レンズの特徴といえば、やはり軽量コンパクトに仕上がっていることでしょう。特に、500mmという焦点距離を考えた場合、このサイズ感は感激してしまうほど。F4クラスのフルサイズ対応標準ズームが入るほどのスペースにすんなり収まりますし、持ち運びに苦労する重さでもありません。これは、冒頭に記したように反射光学系を採用していることに起因しています。2枚のミラーを使い、光を折りたたむように鏡筒内部で反射させて撮像面まで導くため、屈折光学を採用するレンズに比べるとはるかに鏡筒を短くでき、さらに鏡筒内部は基本空洞であるため軽量に仕上げることが可能だからです。いつでもどこへでも積極的に持ち出すことのできる超望遠レンズと言って過言ではありません。そしてもうひとつの特徴が「Tマウント」を採用していること。このマウントのアダプターを介して本レンズをカメラに装着するわけですが、カメラ側のマウントは自由にチョイスすることが可能なのです。つまり、マウントの異なるカメラをいくつか使っていても、それぞれのマウントに対応するTマウントアダプターさえあれば装着できるのです。電気接点や絞り連動の機構は備えていませんが、そもそも反射望遠レンズは絞りが固定されているため、撮影に別段問題が生じることもありません。さらに、このアダプターは誰でも比較的簡単に交換できるのも特徴。メーカーの異なるカメラを所有するユーザーには見逃せない部分といえます。トキナーでは、オプションとして各カメラメーカーのマウントに対応するTマウントアダプターを多数用意しています。ちなみに、Tマウントアダプターを除く本レンズの大きさ・重さはφ74×89mm、310g。一眼レフ用のTマウントアダプターの量さは25g前後なのので、レンズの総重量は335g前後となります。フィルター径は前玉側がφ72mm、後玉側がφ30.5mmとなります。描写は向上するも、独特の使い勝手の悪さは健在注目の写りは、デジタル時代の反射望遠レンズらしく大きく進化しています。構造上フレアが発生しやすいのですが、本レンズは内面反射を徹底的に抑えることにより逆光あるいは半逆光のような条件での撮影でも比較的クリアな写りが得られます。反射望遠レンズというと、過去に登場したものの多くはレタッチソフトで画像を調整しないと良好な結果が得られにくいのですが、本レンズはいわゆる“撮って出し”の写真でも十分使えると思えます。解像感についても上々の結果。合焦部分のキレのよさは、これまでの反射望遠レンズを凌ぎます。また、反射望遠レンズは色収差の少なさも特筆すべき点のひとつですが、本レンズも例外ではなく、それも解像感の高さに寄与しているといえます。掲載した作例はすべてJPEGで撮影したものをレタッチなしの撮って出しで掲載していますが、反射望遠レンズとして写りのよさが理解できるかと思います。ただし、反射望遠レンズ特有の浅い被写界深度は本レンズも同様で、ピント合わせには細心の注意が必要なのも忘れてはならないところ。可能であれば三脚を使い、さらにEVFの拡大機能でライブビュー画面を拡大したうえでピントを合わせるのが、本レンズの性能をフルに引き出せる最善の撮影方法といえます。素早くピントを合わせることが難しく、しかもちょっとクセのある光学的な特性があるなど、一筋縄ではいかない反射望遠レンズ。得手不得手とする撮影条件や被写体もあり、撮影は制約されることもありますが、それゆえ上手く被写体を捉えたときの満足感は極めて高いと思います。もちろん、最新の光学系としていることもあり、以前に比べて写りが向上しているのは嬉しく思えます。このようなレンズをリリースしたメーカーの勇気ある姿勢には、ある意味敬服してしまうところです。筆者の個人的な希望となりますが、焦点距離300mm前後の反射望遠レンズや、AFを組み込んだ反射望遠レンズの登場も期待したいと思います。 著者 : 大浦タケシおおうらたけし宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。
大浦タケシ