極超音速ミサイルでロシアはアメリカを抜いたのか、それともウクライナ侵攻前のブラフなのか?

<ロシアの極超音速ミサイルは、アメリカや中国が開発している最先端のものではなく、古い技術を組み合わせたハリボテだという見方もある>

NATOがウクライナに極超音速兵器を配備すれば報復すると言うプーチン Sputnik/Mikhail Metzel/REUTERS

極超音速ミサイルでロシアはアメリカを抜いたのか、それともウクライナ侵攻前のブラフなのか?

ロシアのウラジーミル・プーチンは12月3日、海上発射型の極超音速ミサイル「ツィルコン」を来年、海軍の艦船に配備すると明らかにした。極超音速ミサイルは音速の5倍以上の速度で飛行する上に機動性も高く、既存のミサイル防衛システムでは迎撃が難しい。【動画】アメリカのミサイル防衛を無力化するロシアの新兵器プーチンはまた、いかなる形のNATOによるウクライナへの派兵も「レッドライン(超えてはならない一線)」を超えることになると発言、西側を強く牽制した。ロシアは11月29日、ツィルコンの発射実験の成功を発表。相前後して軍部隊をウクライナ国境付近に集結させている。ロシア軍は4月にもウクライナ国境付近に部隊を集結させたことがあったが、ウクライナ侵攻への国際社会の危機感はその時以上に高まっている。プーチンはNATOがロシア国境を侵犯していると非難してもいる。先ごろ出席した投資フォーラムでは、ロシアの隣国であるウクライナに西側の「極超音速兵器が配備され」、5分でモスクワに到達可能な事態になれば、ロシアも同様の対応を取ると述べた。「今ならそれができる」とプーチンは述べ、極超音速ミサイルの開発競争でロシアが欧米より一歩先に進んでいることを示唆した。ウェブメディアのポリティコによれば、米宇宙軍のデービッド・トンプソン将軍はアメリカの極超音速ミサイル開発について11月、ロシアや中国ほど「進んでいない」と述べたという。ツィルコンの飛行速度はマッハ9、射程は1000キロメートルで、昨年1月に初めて軍艦からの発射実験が行われた。以降も、数回にわたって試験が行われている。<イージスを出し抜くスピード>「この兵器が通常兵器としてだけでなく核兵器としても使えるとすれば、(ロシアと)アメリカの間の核バランスが変わると思う」と語るのは、国際問題を扱うウェブメディア「1945」で安全保障問題を担当するブレント・イーストウッドだ。「対艦ミサイルとしては、アメリカのイージス戦闘システムを凌駕するかも知れない」と、イーストウッドは本誌に語った。「イージスは飛んでくるミサイルを迎撃するのに反応時間が8~10秒かかるが、その間にツィルコンは少なくとも19キロは飛んでいる。ツィルコンが偶発的に発射され、核攻撃の応酬の引き金を引く事態も心配しなければならない」とイーストウッドは述べた。「ロシア側にとっては魅力的な武器だ。ミサイル開発の技量を示せるし、プーチンのプロパガンダに利用できる」プーチンは2018年3月、連邦議会で「スーパー兵器」と称される核兵器搭載可能な5種の武器の開発計画を発表した。だがツィルコンはその中には含まれていない。スーパー兵器のうち、大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)のサルマート、極超音速滑空兵器のアバンガルド、水中ドローン(無人機)のポセイドン、原子力巡航ミサイルのブレベストニクの4つはいずれも射程が長く5000キロ超の戦略兵器だ。残る1つのキンジャールは極超音速空対地ミサイルで射程はもっと短く、準戦略兵器に分類される。

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