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ペルシア湾岸の産油国のひとつアラブ首長国連邦(UAE)が1月、2回にわたり弾道ミサイルやドローンによって攻撃を受け、3人が死亡した。【画像】攻撃を受けたアブダビ 炎が上がる石油施設攻撃を実行したのはイエメンのイスラム過激派武装組織フーシー派だ。フーシー派はイランによって武器や資金を提供されている「代理組織」のひとつであり、その武装組織アンサールッラーの標語は「アメリカに死を!イスラエルに死を!ユダヤ人に呪いを!イスラムに勝利を!」である。
“治安が良い”UAEで広がる動揺
UAEは湾岸諸国の中でも治安がよく暮らしやすいことで知られ、日本人を含む外国人にも観光地や居住地として人気がある。2020年の海外進出日系企業拠点数調査(外務省)によると、UAEには日系企業の拠点が339カ所あり、これは中東諸国で最多だ。UAEに住む人の約9割は外国人であり、その多くは石油資源の豊富な首都アブダビに居住している。今回、アブダビ空港近くでタンクローリー3台が爆破され、火災が発生し、3名が死亡、6名が負傷したこと、さらに続けてミサイル攻撃の標的となったことは住民に少なからぬ動揺を引き起こした。ロイター通信は「UAEでは1週間に2回のミサイル攻撃があり、高層タワーや世界的な美術館、F1レース場がある首都アブダビでは、初めて治安に不安を感じる住民が出てきた」とし、「少し心配」だと語るエジプト人や「緊張している」と語る南アフリカ人の声などを伝えている。
フーシー派の目標は「UAEを砂漠に戻す」こと
2回目のミサイル攻撃は、米軍も駐留するアブダビのダフラ空軍基地を狙ったものとみられる。中東を管轄する米中央軍は、複数のパトリオットミサイルでこれを迎撃したと説明、UAE国防省は「いかなる脅威にも対処する準備ができており、あらゆる攻撃から我が国を守るために、必要な対策をすべて講じる」と声明を出した。フーシー派は連続してUAEを攻撃しただけでなく、その指導者アブドゥルマリク・フーシーは「UAEと経済関係を持つ国やUAEに大規模な投資している企業は、今日以降、UAEを安全だと思ってはならない」と警告した。さらにフーシー派のナスルッディーン・アーメル情報副大臣は海外メディアとのインタビューで、「我々の国民が平和を得られない限り、UAEは安全を得られない」と述べ、UAEの経済を破壊し「UAEを砂漠に戻す」ことがフーシー派の戦略的目標であると説明、人々はUAEから投資を引き揚げるべきだと主張した。一方UAEのヌセイベ国連大使は、米国政府との間で防衛力向上に関する議論が行われていることを認め、フーシー派によってUAEの安全性が損なわれるようなことにはならないと述べた。UAEには既に米国の対ミサイル迎撃システムTHAADも導入されている。
揺らぐUAEの安全神話
2022年1月に日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した海外進出日系企業実態調査(中東編)によると、投資先としてのUAEの魅力について7割の企業が「駐在員の生活環境」をトップにあげている。UAEは安全だという前提が揺らぐようなことがあれば、状況は大きく変わるだろう。UAEは日本がサウジに次いで二番目に多く原油を輸入している国でもある。私たちのエネルギー安全保障もまた、UAEの安全の上に成り立っていることを認識するならば、今それがフーシー派というイランによって支援された武装組織によって脅かされていることの意味も違って見えよう。【執筆:イスラム思想研究者 飯山陽】
飯山陽
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