ドローンの基礎知識

さまざまな分野でドローンの導入、活用が進んでいます。本連載では、6回にわたりドローンの基礎知識について解説します。第1回は、ドローンとはと題し、ドローンの定義と、これまでの無線操縦(ラジコン)ヘリコプターなどとの違いを説明するとともに、安全な飛行に必要不可欠なルールや飛行に際して関係する国内法を紹介します。

もくじ

第1回:ドローンとは?

1. ドローンとは

ひと世代前に、無線操縦飛行機や無線操縦ヘリコプターを趣味として楽しむ時代がありました。現在でも農業分野では、(エンジンを動力とする)大型の無線操縦ヘリコプターを用いて、農薬散布が行われています。ここ数年で、空飛ぶ無線操縦装置が高性能化・自動操縦化し、一般名称としてドローンと呼ばれるようになりました。日本の法律(航空法)では、ドローンのことを「無人航空機」と定義しています。ドローンという言葉の定義に正式なものはなく、空飛ぶ無線操縦装置に属するもの以外にも、陸上ドローンや水中ドローンといった呼ばれ方をしている無線操縦装置もあります。本連載では、小型無人機としてのドローンについてのみ解説します。

ドローンが急速に普及した理由は、ドローン自体が高性能化し、誰でも簡単に飛行させることができるようになったこと、そして、価格が手ごろになり購入しやすくなったことが挙げられます。今や、玩具(おもちゃ)としてのドローンは1万円程度でも購入できる時代となりました。

もう一つ、ドローンが流行した理由として、……

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2. ドローンの免許資格とは

現状日本国内法において、ドローンの免許に関する法律は存在していません。つまり、何かしらの免許を取得することで、ドローンの飛行が許可されるような制度はありません。ただし、航空法によりドローンの飛行が禁止されている地域や、夜間飛行といった禁止された飛行方法があります。禁止されている地域や方法でドローンを飛行させる場合は、個別に国土交通省から許可または承認を受ける必要があります。

法律上の制度ではありませんが、民間企業や団体が行う技能講習や認定が日本全国で実施されています。ドローンは高性能化が進んでおり、……

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3. 考慮すべき関係法令

ドローンの飛行にはさまざまな法律やルールが存在しています。主に、航空法や小型無人機等飛行禁止法、電波法などです。この他にもドローン運航に影響する法律がありますが、紹介しきれないほど多岐にわたるため、ここでは主要な関係法令に絞って紹介します。

まず、航空法では、住宅が密集している地域(DID地区と呼ぶ)の上空や、空港周辺で決められた高度以上の空域、地上から150m以上の高さの空域でドローンの飛行を禁止しています。他にも、夜間の飛行や人が多く集まっている場所での飛行、物を落下させるなどの飛行方法も禁止しています。詳細については、国土交通省航空局のウェブサイトで確認することができます。

航空法に似た法律として小型無人機等飛行禁止法があります。これは、警察庁が所管する法律で、国の重要施設周辺や公賓の安全を確保する必要がある場所でのドローンの飛行を禁止しています。具体的な飛行禁止場所については、警察庁のウェブサイトで確認できます。

続いて、電波法についてです。ドローンに使われる電波には、……

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4. 主な手続きの紹介

ここまで関係法令を紹介してきましたが、実際にドローンを飛行させるときに、多くの場合影響を受けるのが、航空法におけるDID地区上空での飛行です。DID地区上空は、航空法において飛行が禁止されていますが、国土交通省から許可を受けることで、飛行させることができるようになります。この許可を受けるための申請は、……

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第2回:ドローンの飛行原理

前回は、ドローンの概要や、考慮すべき関係法令を説明しました。今回は、ヘリコプターとマルチコプターの違いや、ドローンがどのような原理で飛行を実現しているかを解説します。特に、従来のエンジンを動力としていたヘリコプターと、急速に普及が進む電気モータを動力としたマルチコプターとの構造上の違いを理解しましょう。後半では、マルチコプターを移動させるための制御方法を紹介します。

1. ドローンが飛行できる仕組み

物が浮く現象には2つの要因が挙げられます。1つは、水や空気などの流体中で生じる浮力を起因とするもの。もう1つは、翼の上下を流れる流体の圧力差により上昇する力が生じ、揚力を起因とするものです。

ドローンは、ブレードと呼ばれる翼を高速に回転させることで、翼(回転翼)に空気が当たり揚力が生じて飛行します。市販されているドローンの多くは、電気を動力源としてブレードを回転させています。ブレードを回転させる原動機部分はロータと呼ばれています。ロータに流れる電流を調整することでブレードの回転数が変化し、揚力が変わることで自在に空中を飛行できる仕組みになっています。

マルチコプター型のドローンは、複数のロータを同時に回転させることで飛行します。このロータの数は、制御上の都合により、……

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2. ヘリコプターとマルチコプターの違い

ヘリコプターとマルチコプターとでは、構造上大きく異なる点がいくつかあります。ヘリコプターの場合、ロータを回転させると、そのままでは反力で、機体自体がロータの回転方向とは反対方向に回転してしまいます。これを防ぐため、通常は尾翼の位置にテールロータと呼ばれる横方向の力を生じる機構を有し(図2)、機体が不意に回転してしまうことを防いでいます。マルチコプターの場合は、複数あるロータのうち、隣り合うロータを逆回転させることで、反力を打ち消しあう仕組みになっています。

図2:ヘリコプターのテールロータ

回転翼のブレードは、その角度によって同じ回転数でも生じる揚力が異なります。このブレードの角度のことをブレードピッチと呼びます(図3)。市販されているほぼ全てのマルチコプターは、ブレードピッチを変えることができない、固定ピッチと呼ばれる構造を採用しています。一方、ヘリコプターの場合は、ロータに取り付けられたスワッシュプレートと呼ばれる機構によって、飛行中常にブレードのピッチを変えることができる構造(可変ピッチ)となっています。

図3:ブレードピッチによる揚力の違い

ヘリコプターの場合は、ロータの回転数を一定に保ち、ブレードピッチを変化させること(ブレードピッチを大きくするとより大きな揚力が生じ、ブレードピッチを小さくすると揚力は減少する)で、揚力を調整し飛行を行います。一方、マルチコプターの場合は、……

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3. マルチコプターの移動原理

地上を走る車と違い、航空機は上昇下降を含む 3次元的な移動を伴います。機体の水平方向の向き、側面から見た角度、正面から見た角度をそれぞれ、ヘディング、ピッチ角、バンク角と呼びます。これに、上昇や下降といった動きが加わります。

マルチコプターの移動原理は単純で、上昇の場合は全てのロータの回転数を上げて、揚力を増すことで実現します。逆に、全てのロータの回転数を下げれば、揚力が減り下降します。前進させる場合は、機体後方のロータ回転数のみを上げて、機体後部を持ち上げる格好(ピッチ角を下げるともいう)にすることで推力を生み出します。後退する場合は、機体前方のロータ回転数を上げてピッチ角を若干上向きとすることで、後ろ向きの推力を生じます。

マルチコプターは横方向への移動も可能です。原理は……

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第3回:ドローンの落下原因

前回は、ドローンの飛行原理について説明しました。今回は、ドローンの落下原因を解説します。ドローンの飛行特性を把握できれば、墜落につながる原因が追究できます。ヘリコプターで採用されている可変ピッチブレードと、マルチコプターなどで採用されている市販の固定ピッチプロペラによる、飛行特性の違いについても理解しましょう。さまざまな墜落要因を想定して、ドローンの運行管理を行う際の安全確保ができることを目指します。

1. 固定ピッチの功罪

地上に接地している静止した物体(車や電車など)は、何かしらの力を加えなければその場に静止し続けます。しかし、ドローン(以下特筆しない場合は、マルチコプター型)は、ロータを回転させ、ブレードが作り出す揚力と重力を均衡させて空中に静止(ホバリング)している揚力を失うと、空中にとどまることができません。地上に接地した物体と異なり、何もしなければ落下していきます。ここで重要なキーワードは、揚力を失うと落下するということです。つまり、仮にロータが正常に作動してブレードが回転していても、揚力を失えば落下してしまいます。

ドローンを含む回転翼機は、ブレードの回転によって、空気をロータの下方にたたきつけるような気流を作ります。このブレードによって作り出された強い下降気流をダウンウォッシュと呼びます。機体の重さ(離陸重量)が重くなれば重くなるほど、ダウンウォッシュは激しいものとなります。

もし、飛行中の機体が急激に降下すると、自らが作り出した強い下降気流に巻き込まれてしまいます。このとき、ドローンは激しい乱気流に巻き込まれた状態と同じになり、多くの場合制御を失います。ロータが回転している状態で機体が下降すると、ダウンウォッシュに入り込んで揚力を失い、更に下降することでまたダウンウォッシュに入り込んでしまうという現象が連続して生じてしまいます。この現象を、セットリングウィズパワーと呼びます(図1)。セットリングウィズパワーに突入すると、機体は安定と制御を失うため、しばしば墜落してしまいます。人が乗って飛行するヘリコプターも、特別な状況でない限り垂直に降下することはありません。セットリングウィズパワーに突入するのを防ぐには、必ず風向きを考慮して水平方向に移動しつつ降下を行うことが大切です。

図1:セットリングウィズパワー

ダウンウォッシュは、……

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2. 主な墜落原因

揚力を失うことによる墜落は、主に急降下が原因であることは先に述べました。他には、バッテリー切れによって動力を失い、揚力も失うため墜落につながるケースもあります。それ以外では、他の障害物に衝突して機体が破損することで、墜落してしまう事故です。当然、操縦者は周りの安全を確保した上でドローンを飛行させる必要がありますが、多くの場合、操縦者が機体を見失い他の物件に衝突してしまう場合や、機体とコントローラー(プロポ)の無線接続が断線して制御を失うことで衝突に至る場合もあります。

また、高性能なドローンに便利な機能として備わっている自動帰還機能も、時として操縦者が意図する飛行経路と異なる動作を行い事故につながる例もあります(図2)。稀に、……

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3. 安全飛行のための対策

安全に飛行するためには、飛行を開始する前に、トラブルが発生することを想定して安全を確保する必要があるといえます。関係者以外の人への影響が懸念される場合は、その飛行の可否を含めて操縦者は安全を確保し、急降下など無理な操縦を行わないことが重要です。また、機体の故障による落下を防止するため、……

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第4回:主な機体構成

前回は、ドローンの落下原因を説明しました。今回は、主な機体構成について解説します。ドローンが急速に普及した立て役者は、自動姿勢制御装置と駆動系です。高性能な姿勢制御には、さまざまなセンサを必要とします。それぞれのメリットとデメリットにも触れながら、ドローンに用いられるセンサについて解説していきます。また、大電流を取り扱う制御系や駆動系の構成についても紹介します。

1. マルチコプターを構成するセンサ群

ドローン(以下、特筆しない限りマルチコプター型のドローンに限る)は、2010年ごろから急速に普及しはじめました。その普及の裏には自動姿勢制御装置の進化・高性能化があります。自動姿勢制御には、機体が現在どのような姿勢となっているのか、どのような動きを伴っているのか、どのような位置にいるのか、それらを正確にかつ瞬時に測定する必要があります。ドローンを空中の同じ位置かつ同じヘディング(ドローンの機首が向いている方角)でホバリングさせるためには、少なくとも前後左右への移動の検知、上昇下降の検知、ヨーイング(上下を軸として回転すること)の検知が必要となります。

加速度センサは、加減速の測定をして前後左右への移動の検知します。左への加速を検知すれば、それを補正する分だけ右に移動させることにより、定位置を保ちます。ただし、ドローンの場合は、意図的な前後左右の移動を行うためには機体を傾けなければならないため、実際は加速度センサの値から機体の傾き分(重力のベクトルの各軸に対する正射影分)を差し引く必要があります。前後左右の移動検知において等速運動をしている場合は、加速度センサで検知できないため、これを補う目的でその他のセンサを併用する必要があります。GNSSや、可視カメラ、気圧センサ、ジャイロセンサなどがその役割を担っています。この4つについて説明をします。

今日のドローンの多くは、GNSS(特にアメリカの衛星を用いるものはGPS)信号を利用して前後左右の移動を検知します。GNSSは、等速運動であっても移動を検知することが可能です。ただし、GNSSによる現在位置測定は、1回計測するごとに時間を要するため、瞬時に移動を検知することが困難です。そのため、加速度センサが主となり、それを補うかたちでGNSSの信号を利用する必要があります。

可視カメラは、屋内などGNSS信号を受信できない環境で効力を発揮します。ドローンの機種によっては機体底面に地面の模様を読み取る可視カメラを搭載したものがあり(図1)、いわば地文航法(地面の模様を連続して撮影し、その画像の変化によって移動量を測定する方法)によって前後左右の移動を検知するものがあります。ただし、この可視カメラによる移動検知センサも、一様な模様の地面であると移動を検知できないため、やはり加速度センサを補う役割でのみ利用されています。

図1:可視カメラを搭載したドローン

気圧センサは、上昇下降の検知に主に利用されます。機体が上昇すれば、気圧は低くなり、下降すれば気圧は高くなります。この変化を解析することで上昇下降を検知します。ただ、環境気圧はさまざまな要因で変化するため、……

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2. 安定飛行を実現する制御系

マルチコプターの姿勢制御で重要なことは、各センサから取得した機体の状態や変化を瞬時に解析し、操縦者が意図しない姿勢の乱れが生じた際に、それをすぐに補正操作することです。特に空中を自在に飛行するドローンの場合は、風や電波障害、磁界の乱れなどの外乱を想定する必要もあります。

FC(Flight Controller)は、ドローン(固定ピッチのマルチコプター)の姿勢制御を行う中央制御装置です。ドローンの制御系では、バッテリー残量の管理や各ロータの回転数なども管理する必要があります。FCは、さまざまなセンサの計測結果や操縦者からの入力を計算し、各ロータの回転数を決定することで姿勢を制御します。

ESC(Electric Speed Controller)は、……

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3. 飛行を実現する駆動系

ドローンのロータに用いられる電気モータには、主にブラシモータとブラシレスモータの2種類があります。この2つのモータについて説明します。

ブラシモータとは、ブラシ(電極)のついたモータのことです。ブラシとコミュータを接触させることにより電流を起こし回転させます。そのため、モータ内部でスパークを生じる場合があり、ノイズを発生したり、接触子の粉じんが発生したりするなど、いくらか課題があります。トイドローンなど安価なものや、100g程度の軽量なドローンは主にブラシモータが採用されています。安価で、電流を流すだけで回転するため制御回路も単純であり、軽量化が図れます。ただし、……

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第5回:通信システム

前回は、ドローンの主な機体構成を説明しました。今回は、ドローンに用いられる通信システムについて、その信頼性確保の技術と方法について解説します。ドローンの最も大きな特徴である遠隔操縦を実現するためには、操縦者(送信機)とドローン本体(受信機)を無線で接続する通信システムが必要不可欠です。またその通信の信頼性が飛行の安全性に大きく関わります。

1. ドローンを遠隔操作する通信システム

ドローン(無人航空機)と有人航空機とで異なる特徴は、その名のとおり、操縦者が機体に乗って操縦を行うか否かという点です。有人航空機は、今日では技術の発達により、通常航行中のほとんどの時間が自動操縦装置によって制御されています。ほぼゼロに近い確率でしか致命的な故障が生じないとされる有人航空機であっても、時に重大な故障が生じる場合があります。当然、自動操縦装置が故障する場合もあります。しかし、操縦者が乗って操縦を行う有人航空機であれば、万が一自動操縦装置が故障しても、パイロット(人)が機体の制御を行うことで、安全な飛行を継続することができます。自動操縦装置が故障しなくとも、飛行中に周りの環境が変化し、離陸時の飛行計画を変更する必要がある場合も、操縦者が機内において自動操縦装置の設定を変更したり、操縦桿(そうじゅうかん)を握ることで解決できます。

もしこれが、ドローンとなるとどうでしょうか。ドローンの飛行も、……

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2. 実務に応じた無線システムの選択

ドローンが無線通信を用いるのには、主に2つの目的があります。一つは、制御通信を用いて飛行(機体)を制御する信号のやりとりです。もう一つは、映像伝送通信を用いて機体に搭載されたカメラの映像を、リアルタイムに地上にいる操縦者などに映像伝送することです。制御信号用の無線通信は、伝送すべきデータ量が少ないので、帯域幅(無線通信に必要な電波資源の量)より、接続安定性や乗っ取り防止のための秘匿化が優先されます。一方、映像伝送の目的で使用する無線通信は、より鮮明な映像を伝送するため、広い帯域が必要となります。無線通信に必要な電波のリソースには限りがあるため、通信帯域は分け合って利用する必要があります。電波が集中して混雑している環境では、映像伝送に十分な帯域幅を確保できず、映像の伝送が途切れるといった問題が生じます。

制御用と映像伝送用の信号を無線通信で送る方法は幾つか挙げられます(図1)。一つは、制御信号と映像信号を別々の周波数の電波で送信する方法です。安価なトイドローンでも、リアルタイムに映像伝送が可能なものは、主にこの方式を採用しています。制御信号も映像信号もそれぞれ別々の通信ではあるものの、WiFiで用いられる2.4GHzの同じ周波数帯で信号をやり取りします。ただし、この場合、限りある2.4GHz帯を2つの通信で使用するため、周囲の無線環境によっては混信が発生し、映像伝送が途切れるどころか、制御信号さえも途絶えて、ドローンが暴走してしまうこともしばしばあります。

図1:2つの信号を電波で通信する方法

2つ目は、制御信号と映像信号を別の周波数帯で送信する方法です。……

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3. 法律上の運用注意

市販されているドローンの多くは、WiFiなどでも用いられる2.4GHz帯で通信するため、一般的には無線従事者の免許などを要せず、誰でも使用することが可能です。ただし、免許を要せず電波を使用するには条件があり、そのドローンが無線技術基準適合証明など(通称は「技適」)を受けている必要があります。

インターネット通販などで販売されている海外製のドローンの一部では、技適を受けていないものがあり、免許などを受けずに飛行させた場合は、電波法違反となるため注意が必要です。技適を受けたドローンには、必ず「技適マーク」の表示がされているので、購入する際は確認することをお勧めします(図2)。

図2:技適マーク

VTXと呼ばれる5GHz帯の電波を用いて映像伝送する機材を使用する場合は、……

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第6回:ドローンの飛行安定システム

前回は、通信システムについて説明しました。ドローンが急速に普及した理由の一つに、安定した飛行が誰でも簡単にできるようになったことが挙げられます。機種によっては、人の操縦技術を全く要しないものも普及し始めています。これらの飛行安定性は、高度な技術が結集されたさまざまなセンサやコンピュータにより実現されています。最終回の今回は、ドローンの移動原理を理解し、飛行安定システムがどのような方法によって航行制御しているかを解説します。

1. ドローンが移動する仕組み

ドローンは、プロペラ(ブレード)を回転させることで揚力を作り出し空中に浮上します。では、前進や後退、左右といった水平方向の動きはどのように実現しているのでしょうか?

はじめに、ブレードが作り出す揚力について考えます。ブレードの回転(ブレードピッチが固定されているもの)で生み出される揚力は、その回転面に垂直な力のみです(図1)。つまり、地面に対して水平に取り付けられたロータだと、鉛直上向きにしか力を生じることができません。これでは、当然に、前後左右といった水平方向の力は生じません。

図1:ブレードが作り出す揚力

そこで、機体全体を傾けて、ブレードが作り出す力を鉛直上向き(持ち上げる力)と水平方向(推力)に分散させ、横向きの力を生み出すことでドローンを水平移動させます(図2)。水平移動を始めたドローンは、外乱がない状態と想定すると、等速直線運動を行います。水平方向への移動を開始すると、ドローンは傾きを減らし、機体を水平状態にすることで一定速度の移動を続けます。水平移動中のドローンを停止させる場合は、……

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2. 安定化システムの主な種類

ドローンは、空中を自由自在に移動することができるため、安定化が必要になる要素が数多くあります。その一つに、自動車と同じような前後左右の水平移動があります。地上を走る自動車は、ブレーキを踏んで停車すれば、特に何の制御をすることもなく、同じ位置にとどまることが可能です。しかし、空中に浮遊するドローンは、同じ位置にとどまるために、常に機体の姿勢を制御し続けることが必要です。多くの場合、ドローンの水平方向の移動量は地上の一点を基準とします。つまり、ドローンは、地上の座標を基にどのくらい移動したかを算出する必要があります。

その一つとして、加速度センサが測定した加速度による機体の動きを積算して、現在どのくらい移動したかを推測する方法があります。しかし、飛行時間の経過とともに誤差が大きくなっていくため、信頼性の低い方法であるといえます。最近の高性能なドローンは、GNSS(特に米国の衛星を使ったものはGPS) を用いた位置計測ができる機種がとても多くなりました。GNSSによる位置計測であれば、飛行時間にかかわらず常に地上の一点を基準とした機体の位置を計測できます。

しかし、GNSSは宇宙空間にある衛星から届く微弱な電波を用いるため、……

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3. 航行システム

ドローンを航行させる方法はいくつかあります。その最も代表的なものは、プロポと呼ばれる送信機を用いて機体の動作を指示する方法です。多くの場合は、スティックと呼ばれる二つの操縦桿(そうじゅうかん)を用いてドローンを飛行させます。プロポとドローンは電波によって無線接続されています。もし、プロポとドローン本体との無線通信が切断されてしまうと、ドローンの飛行方法を指示できなくなります。これをノーコン状態と呼びます。高性能なドローンでは、ノーコンとなったとき、GNSSなどを用いて操縦者のもとに自動的に帰還する機能を備えた機種もあります。

航行システムは、プロポを用いる方法のほか、……

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