日本メーカーが脂汗をかく中国の黒船EV。ジーリー社製“100万円でリーフに迫る性能”のEX3はどんなクルマ?
<ボルボの親会社が手掛けるリーフ級コンパクトカーの性能は?>いまやボルボカーズ(乗用車を作っているほうのボルボ)は中国の吉利(ジーリー)グループ傘下にあったりしますが、電動化を打ち出しているボルボがプレミアムブランドとしての商品企画を軸とするのに対して、親会社の吉利グループはより幅広いラインアップを展開しています。【写真をもっと見る(9枚)】同グループにおける自動車生産を担う吉利汽車(ジーリーオート)が2021年9月24日に、新しい電気自動車「ジオメトリー EX3」を発表しました。ボディサイズは全長4005×全幅1760×全高1575mm、ホイールベース2480mmなので、イメージとしては「トヨタ ヤリス」よりちょっと大きいくらいのコンパクトカーです。そのEV性能は、バッテリーは37.23kWhで航続距離は322kmと発表されているので、「日産 リーフ」の40kWh版に近いイメージ。駆動モーターのスペックは最高出力70kW、最大トルク180Nmということで、リーフ(85kW、320Nm)よりずっと控えめですが、エンジン車のコンパクトカーとして考えれば十分な動力性能が期待できるものです。<世界を変えてしまいそうなリーフの1/3の激安プライス>これで手頃な価格であれば世界を変えてしまうところですが、はたしてジオメトリー EX3のスターティングプライスは5万9700人民元、約105万円! と激安です。中国製の自動車に抵抗を感じるクルマ好きは多いのでしょうが、いまやテスラなどは、品質に勝る中国生産モデルを求めるアーリーアダプター層も増えてきています。さらに言えば、家電やスマートフォン、ドローンなどで中国ブランドをあえて選ぶユーザーも少なくありません。こうして中華系ブランドへ慣れ親しんだ人からすれば、中国製の激安と言っていい電気自動車を、選ばない手はないと思うかもしれません。<10.25インチの大型ディスプレイやデジタルコクピットも装備!?>しかも、発表されている内容からすると、この電気自動車はけっして安かろう悪かろうではないようです。電気自動車の肝となるバッテリーについては、水冷式の温度管理システムを採用することで季節にかかわらず、このバッテリーにおけるベスト温度である20℃に保たれるといいます。パフォーマンスを最大化すると同時に、バッテリーの寿命を伸ばすことも期待できます。さらに公開されているプレスフォトを見ると、インテリアは10.25インチの大型ディスプレイを使ったメーター、8.0インチのフローティングディスプレイなど最新のデジタルコクピットに仕上がっていることが確認できます。また、言うまでもありませんが、電気自動車は振動面で圧倒的に有利で、おそらくジオメトリー EX3も100万円のクルマとは思えないほどスムースな走りが期待できるはずです。現時点では日本での販売は期待薄なジーリーオートですが、オンライン販売などアーリーアダプターと親和性のいいビジネスモデルで参入してくれば、日本でもかなりの数が売れる電気自動車として、既存メーカーのビジネスモデルを脅かすような存在になるかもしれません。文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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